あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『エターナル・サンシャイン』2004年107分アメリカ映画

~あらすじ~
記憶除去手術、記憶と恋愛。
喧嘩した恋人クレメンタインに自分の記憶を消されてしまったジョエル。
彼は自分も彼女の記憶を消そうとするが……。

※以下ネタバレアリ



~感想~

最高でした。
絶対に好きな映画だなとおもっていたけど、やっぱり好きな映画だった。
大好きなミシェル・ゴンドリー監督に、ジム・キャリー、記憶混濁ネタ。
脳の中の話。
カツカレー+温玉、みたいなね!最強さだよ。


ミシェル・ゴンドリー監督は、『ムード・インディゴ うたかたの日々』で知りました。
オドレイ・トトゥが出演している映画を、ひょいひょい観ていた頃です。
キラキラ映像がかわいくて、楽しい、『恋愛睡眠のすすめ』もかわいかったな。
それからMV作品も何本か観たりしたんだけど、やっぱり好きで、
MVでは、Kylie Minogueの『Come into my world』やMassive Attackの『Protection』も良いんだ。
今作は、上記で挙げた映画等と比べるとキラキラ感は少なかったように思う。コマドリ映像や、変なぬいぐるみ等が動き出したりはしないから。
ただ今作は逆に、その様な特殊なアイテムたちが派手に登場する訳ではないのに、しっかりと面白い映像作品となっている。ある種ステゴロ勝負のような印象、カッコイイ。他よりこの作品の方が古いので、ここから進化していったんだなと感じる。
特に、脳内の記憶が混濁する様なシーンは独特の奇妙な派手さがあり、やっぱりミシェル・ゴンドリー監督作品らしい、全編とても綺麗な映像で描かれている。特別なアイテムを持ってきているわけではないのに、映像として色々と楽しいのだ。素晴らしい。

彼はMV畑出身の監督。
MV畑出身の監督と言えば、他には『リリイ・シュシュのすべて』や『花とアリス』の岩井俊二監督が浮かぶ。
やっぱり、MV畑からの監督の映像って、独特に綺麗だよね。
文脈、来歴を追うの好きだ。『セッション』、『ラ・ラ・ランド』と音楽が主にある映画を撮っているデイミアン・チャゼル監督は、ミュージシャンになろうとジャズ・ドラムをやっていた過去があるしね。

ジム・キャリーはなんか好きで、表情がコロコロ変わる人って、万国男女ともに人として魅力的だなと思う。
ジム・キャリーといえば、『トゥルーマン・ショー』は言わずもがなな名作だけれど、『フィリップ、きみを愛してる!』も凄く好きな映画。

エターナル・サンシャイン』単体に関しては、とりあえず今敏監督作品が好きな人は、好きな作品だと思う。
(吹替、松本保典さんらしい、えっききたい。浪川さんも有名だな。)



 映像等に関して

バレンタイン時期、
冬の海や、凍った川が出てくるから、凄く冷たそうな映像で、
全体的に画面に青味があって、綺麗だった。
手振れカメラも面白いし、不安定な感覚が良く出ていて、ナイス。

繋がる扉とか、いろいろ空間があべこべになっていくの良いよね。
さっきまでなかった場所にソファとかさ。
トタン屋根とトタンテーブルとか。シンク風呂。

本が白くて、裏向きになってて……、のところとか映像的にすごく面白くて印象的。

絶対に振り向かない男とかね、面白い。

カラフルな髪がキレイだった。
青い廃墟。アカの脅威、黄熱病、緑の革命枯葉剤色。

崩れていく家のシーン。海辺のベッド。
本当に各シーンがキレイで、印象的だ。

布団内のシーンもキレイだよね、『ムード・インディゴ うたかたの日々』もそうだった。


 ストーリーやシーンについて

構成は…なんだろう。
記憶混濁とかで結構色々あるので、難しい…けど、やっぱり、三幕構成でいいのかな。
ど真ん中で、中止してくれ!!!ってなるよね。
出会う二人、泣いてるOP~記憶を消す、【中止してくれ!】、消去完了、思い出す2人。
やっぱり三幕構成か。
中止して!からの、いろいろな記憶に隠れようとする展開…最高だよね。
時間軸があべこべな作品も凄く好きなので、本当にツボがかなり詰まった映画だった。

メインプロットは勿論、二人の恋の話だけど、
サブプロットとして、ラクーナ社の4人がいたのかなと思う。彼らも重要だ。
記憶除去なんて変わったことをやっている彼ら側にも物語がちゃんとあったのは、良かったなと思う。人間の仕事。

冒頭シーン、
ページが破れていたり、「前に会った?」このあたりで、
多分記憶消去後の二人で、出会うのは二回目なんだなと思っていたけど、
有名なクレメンタインの歌を知らなかったのは、彼女の記憶に強く結びついているからだったんだなということが、後でわかって、グッときた。

あの時言えなかったさよならを言う。
「Bye Joel」
「I Love You」
この、過ぎた過去をせめて脳内だけでは変えようとするような動きは、
好き好き大好き超愛してる。』でもある、過去に対する祈りのような概念で、
愛なので、凄く、良い。

そこから、さよならして遠くへ、記憶を失う流れ、重なって自然なんだよな。
あの時言えなかったさよなら、今は記憶から消える彼女へのさよならなんだ。
砂に埋もれた車内。

"忘却はよりよき前進を生む"ニーチェ
でも結局は、わすれない方がよかった、っていう結末なんだよね。
私もそう思う、どんなに嫌な記憶でも、起きた過去で消すことが出来ないのなら記憶は要ると思う。教訓だから。
でも人によっては本当にない方がいい記憶もあるだろうから難しいけど。

色んな思い出シーンも良いよね。
子供の頃の思い出は特に良い。

起きようと、指で目をパッチリ見開かせるシーンは、『時計じかけのオレンジ』オマージュは少しあるのかな?記憶や意識、脳を操作するネタ仲間として。

最後のお互いの悪口が流れるシーンとか、かなり印象的で、面白い。
この後の二人はどうなっていくのかな。だけど、良い収まり方をするよね。
記憶を失っても会うのすごいよね。
モンテークの海で、2度はじめて出会っているんだよね。特別な場所だ。


 登場人物について

やっぱりクレメンタインについて。
「男は私を美化し 女神のように崇拝するけど
 私はイカれた女よ 安らぎに飢えてるの」
クレメンタインは、結構二面性ある人物…かな。
結構強気で自信に満ち溢れているように見えるんだけど。
繰り返し自分が美しいかきいたり、愛してるかきいたり、
衝動的で、
幼少期はブスの人形に自分の名前を早く"美人になって!"と叫んだり、
自信がないんだよな。
クレメンタインはすぐ結婚しようって言いだす。
すごくよわいんだ。
よわくなきゃ記憶なんて消さないよね。

メアリーもかなりイカれてるよね。博士に惹かれながら助手と、マリファナも楽しんじゃう(これは普通なのかな)。
でも悲しいよね。

クレメンタイン、
普通にかわいいし、人形もたくさんもってて、多分家族にも愛されていたハズなのに、
妙に弱いんだよ。

毎回名前を名乗りで、冗談にするなっていうから、小さいころやだったのかも。
多分何かしら、過去にあったんだろうなと思わされる人物ですね。

クレメンタインとジョエルは真逆な感じで、部屋の雰囲気とかからも出てるよね。
クレメンタインは刹那的で派手だけど、ジョエルは退屈で地味で……。

人生を共有したい、と会話を求めるシーンもいいね。




「今 死んでもいい
 最高に 幸せだ
 生まれて ずっと この時を 待ってた」
「子供のころ会いたかった」
恋だ。

バレンタイン海にいくし
結局また好きになるんだよなみんな
また失うんだ
だからやっぱ記憶はいる
同じことをくりかえす

記憶を失っても、また君を好きになる。
好き自体は、辿れば理由が無いから、やっぱり惹かれる相手にはまた惹かれるんだろうか。何回も。

記憶はいるね最終的に


記憶消して速攻再会して元に戻るのいいよねw
だってジョエルは記憶が消えた当日にもうクレメンタインと再会しちゃうんだよ!?
最高。

EDもよかったね。冬の、雪の海。
"気持ちを変えて 振り返ってごらん
気持ちが違えば 世界も変わるから"

映像のキレイさと、
あべこべ時間軸で、冒頭は難解な話が後半は理解できるようになる楽しさ。があったかな。それと人間臭いよねみんな、ダメな人が多いよ。
記憶と恋愛のテーマもよく映えてて、マッチしていてよかった。


題名は、
観る前は彼女の事なのかと思ってたけど、現代は
作中入る詩からだそうです。

"幸せは無垢な心に宿る
忘却は許すこと
太陽の光に導かれ
陰りなき祈りは運命を動かす"
アレキサンダー・ポープ
★★★★★ 星5つ

「It's OK」

2018/09/06 鑑賞