あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『ユー・ガット・メール』1998年119分アメリカ映画

~あらすじ~

メル友同士の、街角の小さな本屋店主キャスリーンと、大手ディスカウント書店経営者ジョー
商売敵の2人。しかし彼らは、お互いの正体を知らぬまま惹かれあっていく…。


※以下ネタバレアリ


~感想~

手紙という題材で、
ずっと『イルマーレ』とごっちゃになっていたけど、全く違いますね。
両方観た事が無いので、ひとまず先にこちらを観てみました。


お互いを知らずすれ違っているOP、
知り合って気づきつつ隠れつつのすれ違い。
同じ画面に居るのに!
街で二人が遭遇し続ける姿が観ていてもどかしかったり面白く、楽しかったです。
だからこそ、終盤で二人が一緒に行動してるのも自然で、面白い。
小さな町だなぁ!というか、生活リズムや行動圏が一緒なのかなーと。合ってるね、って感じがします。

特殊な撮り方のシーンが2つ入っていて、両方とも良いシーンだったなと思います。
ジョーが、メールに返信するか廊下をうろうろ(左に消えて右から出たり)するシーン。
キャスリーンが、閉店する店を眺めて昔が再生されるシーン。
基本的に、普通の撮り方が多かったと思うので、ちょっと作られた現実では見られない表現が入ると効く感じがしますね。
リトル・ダンサー』でも主人公が叫ぶ?シーンの撮り方が独特で、結構全体で観ると浮いてる様な気がしつつも印象的なシーンになっているよなと思います。
コミカルなシーンはコミカルで、やっぱ全体的にテンポとかまとまってた気がしますね。

服装も良かったなーと思います。
ゆったりしてたり、淡いというか褪せてるというか落ち着いてるというか…。秋~冬がメインの物語なので、全体的に色彩が落ち着いていて見やすい映画でしたね。
だからこそラストの花畑のシーンがよりとても綺麗に見えたのかもと思います。


人物としては、
小さな本屋の店主と、大型書店の経営者という、大きな対照的違いがありましたが、
さらに、
キャスリーンは母方の話しか出てこず、ジョーは父方の話しか出てこない。という違いも大きくあったなと思います。
家族に関しても、ジョーは親族とのシーンが多くありましたが、キャスリーンにはほぼありませんでした。
他にも、
咄嗟な時にも口が回るジョーや、咄嗟では上手く言えないキャスリーン、全体を通して2人は対照的な人物として濃く描かれていたなと思います。
苦手な物について刺し合ったりね。
それでも二人は、お互い親から継いだ店の店主だったり、行動範囲やタイミングが一緒だったりして、結構通じ合ってる、気が合うところも多く描かれてましたね。
2人とも各々大好きな作品があったりするのも、良かったです。『ゴッドファーザー』と『高慢と偏見』。いいね!

ジョーは冷酷そうにみえて、
キャスリーンがスーパーで困ってたら助けるし、正体は明かさないけど待ちぼうけているキャスリーンの話し相手をしたりするので、良い奴さが滲み出ていてよかったです。
冒頭の子守り姿とかね。犬も可愛がってて微笑ましい、ラストの犬w
ただ、ラストの告白までの調整で、関係無い振りして相談に乗る姿は、
ichiのキラーサイトで昔公開されていた、『ストーカー日記』を彷彿として、少し気持ち悪かったけどねw
でも、素の関係性の改善や、最悪の場合を想定させてハードル下げ等、調整は確かに必要だったと思う!ので、成功したし正解ですね。
メル友の正体を知り、色々の後、キャスリーンと現実でも向き合い始めてからのジョーは、まっすぐで真摯で、凄いです。見舞いシーン、良かったですね。少し感づき始めた様なキャスリーンの表情も良い。
特にラスト直前の、ただ普通に出会ってたら~で始まるジョーの怒涛の口説きは凄かったですね。
「“一生 僕と一緒に”ってね」クラクラ。
キャスリーンも惹かれ始めてて、でもこの後元々惹かれていた人と会う約束があって……、複雑な心境が良いシーンでした。

単に商売敵が惹かれ合う話なのかと思っていたら、開始時はお互いパートナーが居てびっくりしました、結果あまりにも円満に破局して笑いました。あの時の彼氏の表情!最高ですね。「愛してない?」凄い顔「私もなの!」!結構このシーン好きです。
まあ、他はおおよそ予想通りの展開で、気楽に楽しめる映画だったなと思います。
小さな本屋さん、魅力的でした。読書が人格形成に関わるのは確かに…、そもそも幼少期に触れた創作物の影響って、その後大きいよなと思います。


「新しい人生に挑戦するんだから勇敢よ」
閉店の決断に対して、「勇敢」と評し、敗者ではないと言うシーンも凄く良かったです。
又、「“変化はいいことだ”と言うけど それは望まぬことが起こった時の慰めね」と思っていたキャスリーンが、終盤、閉店後生まれた時間を使い本を書いていて、これこそ変化によるいいことが起きていて、良いです。
どんな変化でも、悪いことばかりじゃないよ。

エレベーターに閉じ込められた時、みんな自分の本当にしたい事に気づいたりするシーンも、良いですね。急なシーンw 生死の危機を感じると…強い願いが浮かびますよね。
ジョーは、求めるものを知っていた乗り合わせた男を羨ましく思う。良いです。
やっぱり、自分が何を求めているのか、知っていることは大切だなと思います。

毒のある言葉、毒の舌。
言いたくても、言えば結局、後味が悪いんですよね。
後悔する2人の人柄も良いし、これは大切な事でもあると思うので触れていて良いなと思いました。教訓。

冒頭のメールであった一文「鉛筆の花束」、好きでした。
つい、お見舞いの時の包みをみて、もしかして!と思ってしまったw


物語の構成は、三幕構成だったのかな。
メールのやり取り、現実で出会う、【メル友の正体をジョーが知る】、閉店とW破局、2人が会うまで。
基本的には、重要な事はジョーが先に知ってばかりでしたね。
台詞の「ユー・ガット・メール」も序盤終盤効いていて、良かった!

音楽も良かったです。
各BGMもだけど、コミカルなシーンではスペインでスペイン的な効果音とかw
ラストシーンで『Over the Rainbow』が流れるのはもはやズルい!こみ上げます。
でも、特に良かったのはEDの『Anyone at All』、凄く良い曲ぴったりな曲。
こういう人と出会えるといいよね、と思う。しみじみする良いエンドロールでした。

キャスリーン役のメグ・ライアンがキュートでした。
開幕パジャマ姿でパタパタ部屋を動き周りPC前へ急ぐ姿や、ラストのリバーサイド・パークで手首をそらして落ち着かなさげに歩く姿。腕の動きがカワイイ。
ラストの溢れた泣き顔も、素敵でした。


名作はやっぱり綺麗にまとまってますね。楽しい。
★★★☆☆ 星3つ

ちなみに、
★★★☆☆ 楽しめた
★★★★☆ 好き
★★★★★ 殿堂入り
です。
気分です