あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『ダニエラ 17歳の本能』2012年95分制作国チリ

~あらすじ~

17歳のダニエラはSEXに興味深々。
性的な内容を綴るブログも運営しているが、彼女の家は厳格なキリスト教一家だった。


※以下ネタバレアリ


~感想~

  • ストーリー展開
    • 福音書の各章節のタイトルが、幕間に挿入されつつソレに沿って進行する。主人公の福音書が紡がれていく。
      • 1章1節 15歳の対決  自慰、自己紹介~OP
      • 1章2節 神が作りし苦難(母と父)  ブログ~幼少期マリア像破壊
      • 1章3節 我らは世界を照らす光  退学~我ら~光=布教の船
      • 1章4節 火の湖  テレビ局へ~泣く母
      • 1章5節 A&T  彼女(日曜学校の思い出)~レスリン
      • 1章6節 正しい道  彼氏ができる~姉~ライブ(3Pへの興味)
      • 1章7節 罪の階段  誕生日会~彼女との姦淫
      • 1章8節 パインとチーズ  彼との姦淫~教訓話
      • 1章9節 愛がなければ私は無  「私はパウロや神様 ママや他のブロガーに聞きたい 愛があり余ったら? 2人を同時に愛して 両方と淫らなことをしてたら? ないよりはいい? 誰か答えを教えて 私は無より下の存在?」
      • 1章10節 昔の自分にバイバイ  「ずっと続ける気?」~洗礼の決心(ブログ見られる)
      • 1章11節 鏡越しかのように おぼろげ  洗礼~叔母の葬式
      • 1章12節 追伸  エピローグ
    • ポイント:(ブログ)、退学、【彼氏ができた】、罪への段階(彼女・彼との姦淫)、別れ(洗礼(ブログバレ)~叔母の葬式)。
    • 基本的に主人公のセリフや態度がシニカルでイイ感じ。
      • ラスト「幼い頃は 子供のように理解し 考えた 子供じゃない今 何も捨ててないし 平穏なんて信じてない 魂の成熟とか その他もろもろも 実感があるのは“喪失”だけ アーメンアーメン」で終わるのもイイ感じ。アーメンアーメンも皮肉った雰囲気を感じるし、冒頭で触れていた喪失について触れて終わるのもキレイだ。
      • 退学の時の深く座らず上目遣いの様な姿勢からの眼差し等、主人公は常に雰囲気が出てる。ダニエラは独特の見方を世界に対してし続けてた。
        • でも、彼女が洗礼に来てくれない事を嫌がり好きだと説得したり、彼氏とひたすらイチャつきたがったり、年相応の幼さの様なものも結構垣間見える。ブログになんでも描いちゃったり。母親に叱られている姿等は、本当にただの孤独な子供だ。
          • 美人で、独特の雰囲気・芯が感じられ、でもその本質は寂しい少女。結構ハマってしまう人が出てモテる(?)のもわかるかな。魅力的な眼をしてる。
  • 映像
    • 全体的にフワッとピンクがかっている。
      • 彼氏できた直後の幸せなデートシーン等は特にピンク系の色が数種かかる(白黒にピンクかけたような感じ)(このシーンは音楽も結構良かった。他のシーンでは、あまり歌詞付き曲というか音楽自体目立つ様にはかからないので、シーンとして浮いていて、浮足立ってる様が際立っている。)
      • 少し嫉妬したシーンや、終わりが近づいているシーンだけは、青だったり、紫や緑にもなっていた(↑の様な感じで)。布教の船も紫だったので、ネガティブな感情に関わるシーンは寒色系になっていたみたい。(彼氏とのシーンにも紫はあったけど、きもち暖色(ピンク)寄りだった)
        • 全体的にピンクがかっていたのは、まあ性的な欲求の表れかな。最後のシーンは全体と比べてピンクみが薄いように感じるので、別れも経験し大人に近づき、ある程度興味も薄れたのかもしれない。
      • ピンクで全体や枠どられた周囲が塗りつぶされるシーンも多い(章節タイトル等)。枠取りは、ブログ記事に挿入される写真のイメージかな、横に文章が打ち出されたりするしね。(繰り返し出るピンクはブログデザインに使用されている色)
      • 静止画(+泣き声)。(普段の映像より強めにピンクがかっている)(ブログバレ直後シーンなので、性強めな感じかな。)
    • 編集がなかなか独特で面白い。
      • 間間で、ポップなGIFアニメの様な性的なカットが挿入される。
      • 字も結構映像の上に入って独特。(主人公がブログをやっているからかな、結構文字は登場する。)(ちょっと乗ったり、全体に被せたり)
        • ブログのコメントシーンは、『電車男』を少し彷彿とさせる(書き込んでいる人の様子のバストアップは勿論いいけど、各部屋ごとに環境音というか流れる音楽が違ってイイ感じ)。
    • カメラワーク
      • 顔のアップが多い。(頭が中心にくる構図が多め、後頭部含め)
        • そのためもあるのか、主人公の目力がかなり印象に残る。
      • 感情的なシーン等はスローだったり。(退学後の帰り道や、叔母が体調悪化したシーン等)
      • 手前にだけピントがあっていて、奥はかなりボケていたり。
    • エンドロールも良かった。ポップ。全体的に色のセンスがいい作品だった。
      • ラストカットからブログ画面になる感じでエンドロールへ移行!
      • 主人公のセリフ口調での紹介。
      • 沢山の花柄。
      • 沢山の胸先端写真グルグル、乳首位置で合わせてる。
      • 黒背景に沢山のカラフルな口元。
      • 2曲目良かった。
      • 本編含めフォントセンスも良かった。組み方とか。
    • 囁きが時折入る、モノローグ中など考えている最中。(全体だけでなく左右どちらか寄りに聞こえてる時もあったかな?これは少し朧気な記憶)
    • 基本的に音楽が目立つ様にはかからない。そのため、2シーンある歌詞付き曲がBGMに流れるシーンは際立っていた。(+お葬式シーンの合唱も印象的かな(そういえば冒頭も合唱あった)。)
      • この2シーンは、映像自体も、彼との始まりのピンク、彼女との終わりの青紫緑と、対になっているのを感じる。
    • 鼻歌(彼女と別れ考え事の後、洗礼したい旨を母と叔母に伝えるまでの間)
    • 心音
    • テープで補修された携帯
    • 透明フレーム眼鏡
    • 「“喪失”なんて 大抵 そんなものよ」
      • 喪失人生
    • 神を信じない者は自分だけで完結している。
    • maraca 尻軽
    • pucha うるさい
    • ネコの名前は? ネコ
    • 紙の炎
    • 声メインでリップ無しだと、どちらのセリフかちょっと混乱するな。
    • “月が欲しいだなんて言わない 求めるのは あなたの愛だけ あなたの奥底に眠る 野性味を見せてほしい”“月が欲しいだなんて言わない この一瞬を大事にしたいだけ 肌を寄せ合って 愛し合い そこに見える星を奪いたいだけ”
    • うなじに流れる編み込み三つ編み。
    • Jajajaja! 笑
    • NO. Y no. Y no. 絶対に違う  ダニエラは変態って自認は無いんだね。 
    • 愛してる? さあ
      • 感じてる顔ってマヌケ
      • そもそも彼って彼女の事が好きだったのでは?て気もするけどそんなことも無いのかね。
      • あれだけしたがってたのにした後もなんとも微妙な表情をしてる
    • ツバメのTシャツ
      • 「日曜に目覚めて病気なのが好き」「ダックスフンドを怖がるのも」「目が疲れるまでチャットしたり…」
    • ドラマのED曲「でもこっちには終わりがない」からの「ずっと続ける気?」
    • トロピカルなプール
    • 「パインもチーズも好きで汚れをなくしたい」 欲深い。
    • 「7の70倍まで愛してるの」「“7の70倍”は無限ってこと」 すごい口説き文句だ!
    • 「私の人生を映画にした人 マリアリー・リバス」 エンドロールの文も雰囲気出ている。
      • 「(フィクションだと思った? 残念 実話よ)」「プロデューサーって謎だけど 世界を動かす仕事みたい」「ファン・デ・ディオス・ラライン パブロ・ララインがいなければ 私たちは無だった」
    • 妙に近い奴が居たり(姉の成りすまし?直接話したがる)。ひたすら名前強調して果てには声かけてくる奴とか。ブログ閲覧者も結構常連はキャラ立ちしていた。

 

チリ映画 初めて観たかな?、独特。
映像がキレイでいい。性的な表現等もイイ感じ。
ピンクがかった映像に、タイトル挿入や、変なポップな動画、文字、静止画と、色々な事がされていて面白い。色で感情等を表すの良い。
エンドロールで知ったけど、実話だったとは。確かにね。
観てよかったかと思う。

一言でいえば、抑圧された環境により性的好奇心に走ってしまう少女の話、かな。
「愛よりセックスに 興味があるからかも
 “つき合う”って言葉に 拒否反応があるのかな」
と思いつつも彼氏ができて幸せで、でも結局変わらない部分は変わらず、
彼女とも姦淫してしまったりして…、
このままは維持しつつ、ただ汚れは消したいがために、洗礼して、大人になったね、で終わるのか…?
と思ったら、そうはならずに安心した。洗礼前にバレるのは、綺麗な展開だ。
多分結局洗礼もしなかったのも良いなと思う。ダニエラに合わない気がするから、少なくともまだ時じゃないだろう。
(いや、もしかして普通にあの時洗礼して、それも含めてでラスト大人になったんだろうか?わからない)

母娘関係が、この物語において重要な事柄に感じた。彼女の問題の根深い所にあるものは、確実に母(家族)との関係だと思う。
序盤での、娘と対話できずお母さんが車で泣くシーンは結構印象に残る。
娘も娘で、母には愛されていないかもと思っていたり、お互いがお互いの気持ちがわかっていない…(見る気も無い?)、すれ違っている親子だ。
母は厳し過ぎる(叩くまでする)し過干渉気味かとは思うけど、娘も娘ではあって、ウーン。子供なんだ。
叔母の存在によって、どうにかバランスがとられていたけど、でもそれって、本来は叔母無しで成立しなくてはいけない所だと思うし、叔母は退場するので今後母子関係が改善されると良いと思う。
叔母という逃げ道があったからこそ、ダニエラは退学の時に母が言ったように犯罪まで行かず姦淫止まりでストレス発散できていたのだとは思うが、叔母という緩衝材が居たために、破綻していてもバランスがとれてしまっていたからこそ、母子関係が改善されず、ここまできてしまったのかなとも思う。そう考えると、叔母の存在は良くも悪くも…といった感じだ。
多分、宗教の事がなくても、この母親はとても厳しいタイプだろうに、そこに宗教もプラスされ、子供にとってはかなりがんじがらめの偏った生育環境だったろうと思う。さっさと家を出た姉は賢い。

…結局抑圧された環境というのは、
人として不自然で、過剰な事を起こしてしまうというか、世間で問題と言われる様な事が発生し易くなるのかなという気はする。
「処女は段階的に失う」「“罪には段階がある”」何かが起こる前には、その原因となる事柄が当然存在する。

「“神様 正しい道を歩ませて”」 LIMPIO&RECTO
ダニエラは飄々としているようで、実は苦しんでるんだなということが、終盤で、描かれる。
正しいとされることから外れると、辛いよね。
特に、ダニエラは世間(コミュニティ内)的に正しい行いなどを、周囲から強く示される環境で育っているため、自分の行為は悪だという感覚自体は元からあったんじゃないだろうか。環境的に宗教を丸っきり信じていない訳でもなさそうに思う、とすると結構しんどかったのではないか。別に彼女は神を完全に否定したり、自分の行為を受け入れ切っているワケではないのだと思う。見ないフリ。
正しい事を求められるからこその、反発行為で、匿名ブログで……。正しさと相反する行為を続けてしまうのではないだろうか、自傷にも近いのかもしれない。ストレス。
又、トマスとの付き合いでは、性交渉無しでも幸せを得ているのに、物足りず浮気をしてしまい、トマスとの行為後も両方継続し続けるという深みにはまっていく。「どんな誓いを立てても 私は破り また階段を下りる」…開き直ることも出来ないのに、自分でも悪だと薄々感じていることをやめられない。正直バカかもしれない。どんどん自分が苦しむ方向に向かっていて、結果正しい道に行きたいって願う事になるし、でもどちらかを切り捨てる勇気は無く両方失ってしまう。幼い。(幼さ故に、性的な事に関する価値観の理解も浅く、過度な抑圧から安易に走ってしまう部分もあると思う。)
これの原因って…、そもそもは愛に飢えているからなんだろうなと思う。無知と。
そして、その愛に対する飢えというのは、親から正しく受け取れなかった事、自分を蔑ろにしてきた過去から繋がるんじゃないだろうか。
そこが解決されないと、満たされないと、彼女は苦しみ続けるままなんじゃないのかなぁ…と思う。
その飢えを、神の愛を信じることで補完できればそれもまた救いだと思うけど、ダニエラはそれは出来ずにもがいているようだった。結局彼女が求めている愛は、母の愛とか、生身のものなのかもしれない。子供の頃に受けられなかったものを、求めているのだろうから。

ただ、ラストでダニエラは、彼氏彼女、そして叔母を失う。
これにより彼女は幼さを捨て、子供で無くなったんだと思う。「"だが大人になり 幼さは捨てた"」
拠り所を失ったがため、一人立つというか。複数の人物たちと眠っていた開幕から、一人バスから降り歩き出す終幕へ。
今までのダニエラは、本当に自分が拠り所にしていたもの等を、失う経験はあまりしていなかったのかもなと思う。冒頭から喪失人生とは言っていたけど、冒頭の喪失は肉体的喪失寄りであり、結末の喪失は精神的喪失という違いがあるように感じる。
この先彼女がどう生きていくのかはわからないけど、彼女の今までの問題は愛に飢えている幼さが起因していた様に思うので、多分、信じない大人になって、求める子供じゃなくなったこの先では今までの様な苦しみは起きないのではと思う。好奇心も落ち着いただろう。
幼さを捨てきれていなければ、また繰り返してしまう可能性も大きいけど。強く感じている喪失の中に、幼さもちゃんと含まれていそうか。
あの軽やかな足取りを見るに、この先は新しい生き様が待っていると思いたいかな。


かなりモザイクで修正されていて、結構見えないシーンがあったので、修正なしでぜひ観たかったなと思う。
 


★4
2018/10/04 鑑賞