あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『地球は女で回ってる』1997年96分制作国アメリカ

~あらすじ~

ラブ・コメデイ。主人公は小説家。ざっくり言って、無責任なダメ男。
彼は、元妻らや家族との日々をネタに小説を書いていて……。


※以下ネタバレアリ


~感想~

前から少し気になってはいて、
最近ウッディアレンがどんな人物なのか気になった+レビューを読んだら作中作と現実とが混ざる(好きな展開)とのことで観ることにした。
監督が主役を演じているんだね、監督の女性遍歴もなかなからしい。

  • ストーリー
    • 前半:表彰式の仲間集め、後半:旅+表彰式着後は仲間の伏線回収
    • 始:スランプ→終:スランプ脱却
    • 中盤から、現実にも小説の作中人物たちが登場するようになる。クライマックスでは現実の人物らも妄想の中に。
  • 映像
    • 切り貼り多用!て感じ
      • 同じシーンを何度もとっててそれを切り貼り重ねてるのか、長く回していて間を切ったりしてるのかな? 戻ったり進んだり。
      • 同じ椅子に座ってるシーンでも、パパパと姿勢が切り替わったりする。
      • 冒頭のタクシーシーンなんて、何度も何度も流れて面白い。
    • ピンポケ役者 (持ってるカバンやコップはボケないのもウケる)(自分もなるのも良かったな)(よりボケたり)
    • パッと現実と作中作と切り替わる、唐突なぐらい。
    • 結構、作中作の主人公と現実の主人公と、演技が似た感じて通ずるものがあって面白かった。奥さんもかすれた声が似通ってたり。
    • かみあうsexギャグ
    • 肌着ぼっろぼろ
    • 僕に恋をしないと約束して
    • 神の不在は僕のせいか?
    • 浮気相手と父と息子と、みたいなシーンって結構よくあるシチュだけど、え?て感じあるよね。でも父視点でいうと、浮気相手とも息子とも時間がとりたいから、合理的なんだろうな。
    • 小説中でも主人公を自分がやってるシーンとか、自分が主人公なことを認めたというか、なんというか。
    • 地獄は快適 最高 人生は山あり谷ありだが最後には死ぬ、楽しまないと損だぞ
    • 君の創造する宇宙は現実より素晴らしい これって、監督が言われたい言葉かなあ言われてきた言葉かなあ。
    • 自分の限界を正直に認め前向きに生きろ
    • 解体 DECONSTRUCTING
    • 真実は1つでも人生は人によって受け止め方が違う 小説だけが彼の人生を救うのだ

 
創作信仰

人とうまく生きられない人の人生、こんな感じだよな。わがままで……。
我儘だよね。こんな自由にしたいなら、一人になればいいのにね。
でも、独身生活は孤独過ぎるって、一人にもなれない。
弱いよね。

レビュー読んでると、なんでこの主人公がこんなモテるの?って感想を見かけるけど、
才能と純粋さを兼ね備えた人物、なのは間違いないから、
多くの人が持てていないものを持っている人ということで、みんな惹かれやすいのかなー。持ってないものを持っている人に、人は惹かれやすい説。
あと結構素直だし、ドラマチックだよね。(自分の人生を美化してとらえているフシも少しあるからかも。小説化しちゃうとこといい(役者もカッコよくさ)。恋をしないと誓って、なんて自分に酔ってなきゃ言えないよ。)
ただ、まあハチャメチャ人物ではあるだろうから、なんだかんだ一緒にいて楽しいのかもね。

みんなぶち切れてたな。
好き勝手するし、棚上げ凄いし、暴露本とか無くても全然オイ!!だよねw
好きな人が自分だけのものにならないのは辛いし、自分も大切だから軽んじられたと感じて辛いんだろうな。
自分に価値が無いように感じて。
サクッと別の人と結婚するフェイは賢い。一番若くて年齢差あるだろうしなー、ある程度わかった状態で冷静な状態で過ごせてたんだろうな。(それこそ、恋をしていなかったから、かも。)
フェイは、ハリーが言う通りに、彼に恋をしなかったから、彼に傷つけられずに済んだんだね。恋は盲目、熱病……。
ハリーは現実に生きていないんだから、現実で一緒に生きようと望んだら、叶わなくて傷つくよ。人は他人を治せないよ。治すとか無いよ。
みんな自分を大きくし過ぎだよ。でもまあ、なんでも願い事叶えるよとか言っていたフェイは、やっぱり恋をしなかったから(していても)、幸せになったなー。身の丈大事だよ…かなぁ。

本当、自己肯定感が、結構大切なピース、テーマなのかな?って感じは、したな。
結局人って、なかなか自分で自分に強固な自信を持つ事は難しいというか、
だから支えてくれる誰か、恋人や何かを求めているのかな、と思う。
ハリーがあんな女好きなのも、その辺が関わってると思うし。自信があるようにないようにふるまうのは、反動だろうなって。
肯定されたいから、幼少期親に責められながら過ごしたのもあって、誰かに愛されたいんだろうなって。
だからか、表彰式は相当嬉しかったみたいだったしね。
本当、寂しい子供のままの人物だ。
無償の愛を受け取ることのできなかったルーツが、ずっと尾ひれを引いているんだろうな。(姉と奥さんを混ぜれてしまうのも結構倒錯してない?穿ち過ぎか。)人と信頼関係を上手く築く事が出来ない、誰かを気遣って誰かのために行動するとか無い。
女性や創作に縋ってる。欲しがり。常に自分が自分が!
自己肯定感、の話はまあ、彼の周囲の人物に対しても思うな。それを彼から求めてしまった人は傷ついたんじゃないかな。
彼に対して何かを望んだ人はとにかくみんな傷ついたんじゃないか? 結局他人に何かを求めるって、難しいと思う。

でも本当、彼は小説があって、よかったよね。
逆に、まあ小説が無ければここまで人を引き寄せることもなく、もっと前に普通になっているか、いなくなっているかも。
才能、良くも悪くも。
最終的に創作信仰って感じで終わる。小説だけが彼を救う。(成長や変化は特にないね、彼はこれからも娼婦を買い続けると思うし。そうそう人って変わらない終わりで良いと思う。それを否定する事も無く終わる。)
でもそれは本当そうで、結局、彼が求めてやまない自信、自分を認めて肯定できるのは、自分だけで、それを得るためには何かを作るしかないからなんだと思う。
それが人によっては家族だったり、経験だったり、彼の場合は小説で。
本当は、凄い自分じゃなくても認められるといいんだろうけど…。無償で。

自分の限界を認めて、前向きに生きていくということ……。
色々認めたから、また書けるようにもなった、ってことなのかな。


作中作との交差もいいけど、映像の切り貼り感が面白かったな。

色々監督自身のWikiも読んだりして、結構自分の体験や思想をガッツリ作品に反映させるタイプの創作者なんだなという印象を感じた。
というか、この映画自体でそれはかなり感じる。本当この映画の大半が自分の経験をもとにされているのでは…と思える、大なり小なり。傷ついたり励まされたり。
でもこういう、自分の出せる全てを出して作品に昇華させるタイプの創作物って、良いかなと思う。燃やしてて、燃えカス、作らずにいられないというか。
それにしても、本当幼少期の体験って、一生を左右するな。

レビューで『フェリーニ8 1/2』について触れている人が多くいたので、
その作品も観てみたいなと思った。

★3