あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『愛を読むひと』2008年124分制作国アメリカ・ドイツ

~あらすじ~

15歳のマイケルは、街で体調を崩していた所を21歳年上のハンナに助けられる。
知り合った2人は次第に関係を持ち、
ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになるが……。


※以下ネタバレアリ


~感想~


坊やの笑顔と、
女性の眼差しが印象的。

行間を読む。
小説でも、対人でも、同じというかなぞられてるのかなと感じた。

読み書きができない事がわかった時は、とてもハッとした。
でも、その恥を隠し通すため無期懲役まで受けるなんて……、凄い生き方だと思う。
感情の話ではなくどう行動するか、でも結局主人公はハンナの意志を尊重することにした……のかな。それとも単に行動できなかっただけか。
多分、尊重したんだろうな。
辛い。

甘いシーンはとても甘いのに、辛い映画だった。
前半の印象が後半で吹っ飛ぶというか、前半があるからこそ後半が苦しい。
うぶ毛が眩しい。

初恋って重いなあ。
罪深いよ。

自転車旅行に続く詩のシーンとか、とても幸せなのにね。
人間を完全にするもの、愛。

何も怖くない 何も
苦しみが増せば 愛も増す
危険は愛を一層 強め 
感覚を磨ぎ 人を寛容にする
私は あなたの天使
生の時より美しく この世を去り
天国は あなたを見て言うだろう
人間を完全にするもの
それこそが 愛だ


私はあまり歴史を知らないから、
アウシュビッツ等の事はこの映画を観るまでよく知らなかったので、
勉強にもなった。

評判が良く、よく耳にする作品なので、観てみたけど…、ウーン凄かったな。
描きたいメッセージが強くある作品で、創作物を作る事の意義を感じた。

ハンナの部屋、
星型のすり状になるシートをドアのガラス部分にはったりしてて可愛かったな、
カーテンで陽がやわらいでて、全体的に可愛らしい雰囲気の部屋。
独房でも、段々と緑が増えたり、柄物カーテンや写真なども多くはってあったりして、可愛らしかった。花柄の服を着て手紙を描いてるシーンなんて独房とは思えない華やかさがある。
輪ゴムでまとめられたテープが棚に並ぶ光景も、良い。
(文字が読めない事に対しての気遣いだろう、本数を数字だけでなく丸の数でも表しているのがマイケルのやさしさを感じる。)

三つ編みをとめるのカワイイ

ハンナの過去を知るまで、
感受性の強い、不安定な張り詰めた女性、なのかなと感じてたけど、
過去を知ると、過去からの無意識の影響もあるのかなと思う。
でも多分、感受性の強さや生真面目さ等は彼女の生来のもので、アレがやっぱり彼女なんだろう。
価値観や倫理観が独特で、強くて脆いというか、プライドが高いというか、本当に張り詰めた、割れそうな氷みたいな人というか……辛い。


始まりは娘と会う約束をしていた日の朝で、終わりは娘にハンナについての話を始めるところ。雪解けのなか。
ラストシーンで、マイケル、子供ができて良かったねと思った。
本当に娘との夕食の時言っていた様に、誰にも打ち解けられず生きていたのだろうから。でも、歩み寄ろうとし始めて終わったから、良かった。
あと娘が小さなころと大人になった今とで、同じようにサプライズ大好きって言うのは変わって無いな~って、微笑ましくて良い。マイケルもやっぱり少し嬉しそうだった、わかる。

三幕構成なのかな?とは思う。
出会い、別れ、再会、テープ、別れ。

良い、映画。


オデュッセイア
犬を連れた奥さん

キリル文字



☆4



他感想記事を色々読んだところ、
とにかく「文盲」が重要な要素で、
文盲であることは、差別対象に見られる可能性がある事でもあるし、
教養が無い事の恐ろしさでもあるし、
メタファーでもある……と。

この物語は結局何の話だったんだろうと言うと、
他感想記事の影響になってしまうけど、
無知の恐ろしさと、変化についてなのかな……って。私も思いました。
あと、罪とは何か……かなあ。
マイケルの人生を変えたハンナ、
彼女が去ってから止まっていたマイケルの時間は、再会後の彼女を受け入れ難い葛藤を経て、ハンナを永遠に失った事で少しずつ進み始め、
ハンナのあの少し浮いた様な価値観は無知故の物で、文字を学び教養を得た彼女は、裁判まで罪と自覚していなかった様なのに、自死を選んだ。

あそこでハンナが自殺したのは、
マイケルに受け入れてもらえなかったと感じた事や、
社会に出る不安感からだと思っていたけど、
それだけでもなかったんだろうなと思う。

刑務所での二人の再会シーンはとても痛くて、辛い。