あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『ルーム』2015年118分制作国カナダ・アイルランド・イギリス・アメリカ

~あらすじ~

閉ざされた部屋で暮らす、5歳のジャックとママ。
ジャックは、外の世界を知らない。この部屋が2人の全世界だった。
だが……。


※以下ネタバレアリ


~感想~

みたかった映画。
良かった。


子供がとてもかわいかった。
すきとおる肌。とがったくちびる。長いまつ毛。

小物類というか、
限られた日々のなかで少しでも豊かに暮らす工夫も、魅力的だった。
5と塗られたまるい誕生日ケーキ、たまご蛇、持ち手の溶けたスプーン……。
壁に沢山はられた絵なんかも良い。
お守りの虫歯。

部屋の話でもあったからか、各部屋部屋結構色々対照的だったり、特徴があったなと思う。
部屋は、いびつなのに子供の生活している遊び心に彩られていて、どこか豊かな面がある。でも、やっぱり暗く醜い不衛生な面も兼ね備えてる。
部屋の次に入った病院の一室とか、広くて大きな窓がたくさんあって、明るく、高い場所にある。ネズミも出るような、清潔でない暗く狭い納屋とは大違いだなと感じた。
ジョイの実家も、中二階?の様な面白い作りになっていたりと広くて、印象的。
でも特に印象的だったのは、ジョイの部屋だ。
ジョイの部屋は、彼女が誘拐された17歳当時のままで、まるっきり子供部屋だった。壁に沢山はられた写真の切り抜き、広く可愛らしい部屋。(部屋は粗雑でクローゼットの影響か青系のイメージだが、ジョイの部屋は全体的にピンク系配色だったりする所も正反対だなと思う。)
このシーンは結構ショックだったな。
ジョイは今でこそ母親となっているが、元々は、娘で、ただの少女だったんだ。
17歳のただの女の子が、誘拐監禁によって未来を捻じ曲げられてしまった。本来なら彼女はこの部屋の中で順当に成長していくはずで、多分その場合の24歳時の部屋はこの光景では無いだろう。
そういう、起きた事件の残酷さが如実に現れるシーンで、こちらも愕然とした。
あと、最後の変わり果てた部屋(納屋)の姿も、とても大切な光景だったなと思う。
あの姿を見るのは大切だったと思う。

外に出た後のアライグマ帽子も可愛かったな。髪切るとやっぱり印象変わるね。
散髪シーン、良かった。アイラビュー…!

天国 ピョン
合間合間に入る、ジャックの独白も独特で良い間というか雰囲気を出していた。
物事の捉え方が独特で、面白い。
「"世界"はとても広い所だ だから時間が少ない
 バターみたいに薄くのびてるから」

冒頭でジャックは、部屋の物々におはようの挨拶をする。
ラストで、彼が部屋の物々にさよならの挨拶をするシーンは、うおおお…となりました。
グモモモという静かな環境音とカチカチと照らされる部屋の中から始まり、流れる音楽のなか上空から外に出た2人を映して終わる。しっかり真逆ですね。部屋の姿も変わる。
ちょうど真ん中で脱出劇があり、前半開始20分程で生活費問題、3/4あたりの後半では痛い取材があり、クライマックス5~10分では母子で部屋に帰る。綺麗に三幕構成の作品だと思いました。


7年の月日は、全てを変えてた。
ずっと帰りたがっていた家は、形を変えてて。あの頃のままではない。
お父さんも、娘と犯人の子供であるジャックを見てくれない……。
そりゃ、まあ…そうだよね。17歳の子供だった娘が、攫われて、やっと帰ってきて、でも犯人の子供を身ごもり出産してて……父親としちゃ辛いよな。でも、だからこそ、娘のジョイの気持ちを思うと、お父さん…!!ってなる、苦しいよ。
ジャックは、19歳のジョイを救ったのに。ジャックが生まれなかったら、ジョイは死んでしまっていたかもしれないんだよ。それなのに。辛い。
でも、お母さんが再婚したレオが、めっちゃ良い人でよかった。嬉しかった。
再婚を知った時は、ジョイが生活し難いだろう事は勿論、レオ側も子供たちはジャマなのでは……と不安だったけど、丁度良い距離感で接してくれる人で、お母さんが再婚相手に選んだ理由もわかる気がした。

オールド・ニックはやっぱりなんか色々言ってることがおかしくて、自分を客観視できてないんだなと思った。あと他人のことも全然見ることができていないなと思う。
(勝手に監禁しておいて)誰が生活費払ってるんだとか、ジョイがジャックから気をそらす為に早くと呼んだら単に誘われてると受けた様な返しをしたり。暴力で全て服従させたり。
誕生日プレゼントをくれたりもする。なんか色々とメチャクチャで、彼の本当の望みとかってよくわからなかったなと思う。死んだジャックを運んでいる時の彼は少し悲しそうにもみえた気もするし…。簡単にジャックを置いて逃げたのも謎、まああの状況じゃアレしかなかったかな?

とにかく色々と描写も細かく、描き切られていて、素晴らしかった。
何でいっしょに寝てないんだろう?とか、観進めているうちにハッとして辛かった。
表情も本当に熱演で、凄く良い映画だ。カメラワークやなんかの演出も光っる。まぶしいときは、まぶしい。初めて見る世界の情報の多さとか、追体験できたと思う。

やっぱり、脱出するシーンはこみあげる物があった。
特に、巡査にちゃんと通じたシーンからのジョイも救出され2人が抱き合うまでは、ウッとなりました…泣いちゃうよ!ちゃんと聞いてくれる大人がいてよかった。

ジョイが、ジャックに髪(パワー)をもらったあとの、
二人がとりあえず何でも試そうと決めたくだりも良いなと思った。
あのあたりの家族団らんとか、微笑ましくて良かったな。ソファの奥に吸い込まれていくジャックw 友達ができたことも本当に良かった。

ジャックの親は自分一人だけだ、と宣言したジョイ。
あの取材内容は本当に、人の心が無いのか?いくら仕事とは言え…かなりムカついた。
あの状況で最善の選択ができてたかどうかとかさ……、ほんと!なんだよ!!って感じだ、ジョイ自体がまだ子供で、ジャックを産んで拠り所を見つけた事でどうにか生き永らえたみたいなものなのに。くー!!!
(大体、ジャックだけ逃がした場合、ジョイはどうなる?酷い!
ジョイはよくあの環境で、あの作戦が成功する程までにジャックを教育し育てあげる事ができたな…と思う。凄いことだ、17歳までの社会経験しかないのに、本当に凄いよ。ストレッチとかは部活の経験が生きていたのかなあ。)
ただ、一応彼女にとってアレは、色々と見つめ直す機会にはなったのかもしれない。過酷だったろうけど。
観賞中、部屋の外に出たジョイはジャックを愛し続ける事が出来るのだろうか?って事がずっと不安だった。
2人は、特殊環境による相互依存というか、他の一般的な母子よりもさらに閉鎖的で盲目な関係だと思うから(それは5歳になってもオッパイ離れしていなかったりする描写からも明らか)、
その環境から広い世界に出た時、どうなるか不安だった。
ジョイが事件を全て忘れたがったら、ジャックの存在は……。
ジョイには元々ぬけがらの日とか、あったしね。
不安だった。
でも、結局はジョイはジャックに救われる。「また あなたに救われたね」
子供に、救われるんだなって。
ずっと一緒だった2人、一度離れ、再会し、ジョイもパワー(髪)を貰い立ち直りはじめ、ジャックもオッパイを卒業(親離れし始め)して、あのシーンって2人が成長したシーンだったんだな。前に進み始めたんだ。あの離れた時期は必要だったんだね。その後2人は挑戦を始めて世界を生きるようになって、そして部屋と別れた。
救いのある話で、よかったなと思う。
ジョイはちゃんと、ジャックの大切なママだね。
子供、すごいね。
お父さんのこととか、奇異の目とか、色々まだ前途多難なことはたくさんあるだろうけどきっとこの親子は乗り越えていけるだろうと思う。心配いらないね。
家族って、いいね。大切だね。家族と仲良く暮らせるって、本当に幸せなことなのだなと思う。

脱出シーン、ジョイの自室シーン、散髪シーン、らへんが特に胸に残ったくだりでした。


「よくないママね」
「でもママだよ」
「そうね ママよ」
☆5