あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『アラジン』2019年128分制作国アメリカ

~あらすじ~

1992年制作のディズニーアニメ映画『アラジン』の実写アニメリメイク
原作は『千夜一夜物語』の『アラジンと魔法のランプ』


※以下ネタバレアリ


~感想~

かなり良かった。
珍しくIMAXで視聴、正解だった。(画面は大きい、音も良い、良いね!)
最近観た映画のなかでもトップ。上半期第一位。

(良すぎて、なかなか感想がまとめられずに観てから記事書くまでにかなり日数が経ってしまった。なので、簡素にまとめます。)


事前知識は、アニメ映画の内容をほぼ忘れている状態だった。それは良くもあり残念でもありだった、新鮮でもあったしもどかしくもあった。
視聴後は、アニメ版もまたじっくり観たくなった。今作だけでなく、アニメ版とも見比べてより楽しみたくなるような良リメイク。ディズニーシー(アラビアンコーストがある)にも行きたくなった、凄いパワーだ。(元曲の良さも感じて、観て以来ずっとぐるぐる頭で流れてる。)

ディズニーアニメ映画の実写リメイクは、他にも『美女と野獣』を以前視聴したが、アレは単なる美しい映像の実写化映画の域を出ない様な印象を受けた。(アレはアレで良いが)
しかし今作は、実写にする際の解釈は勿論、改変の塩梅や方向性も丁度良く素晴らしかった。今どき、現代的な世情も含まれ、原作の良さを引き出しつつも、今作なりの良さもしっかりとあって感心した。吃驚した。かなり好きな映画だと思う。また観たい。


象徴的な歌である『Friend Like Me』がラップアレンジされてたりなんてサイコー!
面白い。今どき!
そしてジャスミンのキャラクターも良い。元は多分ただ退屈してるお姫様だったのかな?それが今作では、政治への女性進出とか……問題提起、これもかなり今どきのキャラクター設定だなあと思って感心した。こういうヒロインをかのディズニーでやるっていうのは、なかなか今を象徴した感じがあって、良い!驚き。キャラも立って魅力的だし、彼女のソロシーン(たしか今作オリジナルソング)もとても印象的なシーンとなっていて素敵だ。
強く屈しないヒロイン、カッコイイね。
色々と、今だからこそ!というか、「今」実写化したリメイクアラジンという要素がとても強くて、心地よかった。挑戦的で面白いと思う。今だからこそ作れるもの。そしてその改変の塩梅が本当にほどよい。

ジーニーが人になる、というのも今作で特徴的なアレンジ部分だと思う。
コレも結構面白い。というか、美しいと思う。
実はただの人間が一番幸せなんだよ、という概念は、ただの人間である我々の単なる願望(そう思いたいだけ)なんじゃないかな?とも思うのだけど、綺麗なオチだなと思う。人となったジーニーの子供たちへの語りから始まり、ラストそこに戻るという展開もまとまってる。
まあ、原作のジーニーは解放されたらもう強すぎるよね、って感じでランプの魔人=ハイリスクハイリターンな感じの調整が行われたのかな。解放されても魔人だと、あまりにも膨大な力がジーニーの良心に委ねられてるというか。(アニメでは人にならないみたいだし)
魔人はとても強いけど、その分ペナルティが凄くて、決まり事に縛られてる。その辺のバランス感覚とかも、結構人間目線の決まり事だな~とは思ったりするんだけど、まあバランスがとれていて綺麗だよね。
特別な存在が、実は平凡な存在に憧れている。これって、本当にありふれた概念だけど、でも、ここまであふれてるってことは事実なのかなあ。それともやっぱり平凡な人がそう思いたいだけの願望なんだろうか?ウーン。でも、確かに自由が素晴らしいのは本当かなと思う。


アラジンの舞台といえばインド。インド映画といえばダンスシーン!
私の知識はあやふやだけど、でもマジでミュージカル映画にするのにうってつけの題材だなと観る前から感じていてワクワクしていた。相乗効果というか、マッチング感がすごい!やっぱりとてもサイコーだった。説得力というか…、本当に合ってる。

衣装も素晴らしかった。
アラビアン衣装?インド系の民族衣装?、とても綺麗で美しくて、可愛かった!
裾丸くなってたり、ズボンで、装飾は華美だけど、露出はそんないない。
程よかった。素敵だ。好き。
(ジャスミンといえばのグリーンのドレスの解釈やアレンジも良かったと思う。)

アクションやダンスが凄く楽しくて、派手で煌びやかでサイコー!

映像で印象的だったのは、回転が多かったこと。
回転するカメラワークが多く、人も回転して変身したりしていた。
自分中心に回転するカメラも、世界を中心に回転するカメラもあって、意味合いも感じて良かった。内容的にも映像的にも、面白いなと思った。


「嘘」(からなる色々)が重要なテーマだったのかなって。(「家族」も少し?)
『アラジン』の決め台詞と言えば、「Trust Me」が有名だ。しっかり知るまでは、フーン?だったけど、今作を観てみてなるほどそれでこの決め台詞だったのかと感じた。
嘘で塗り固めたアラジンが、僕を信じてと言う、なかなか効いてる。必然性がある。

王様が作中で、人は誰でも過ちをおかす、という様なことを言っていた。
人は誰でも過ちをおかす。だからこそ挽回方法が大切なんだなあ、と思った。
そのまま嘘を吐き続けるのか、自分や他人や、愛する人に。
結局、ガワをどんなに作れても中身は同じ。
取り繕っても本質はひとつ。罪も関係なく。本質。

アラジンは、自分の為に嘘をついたりはするけど、その行動は誰かを傷つける為や悪意から成るものではない。罪は罪でも、やっぱりそこに本質が現れているかも。
そういえば、今作の悪役であるジャファーにも、この王様の言葉ってのはかかるのかなと思う。ジャファーは色々と酷い事をするけど、殺されはしない。ランプの魔人となって自由を失ってしまうけど、でも生は残る以上同時に改心のチャンスも得たのだと思う。(そういえば、ジャファーの過去も今作での改変要素なのかな?アレもバックボーンが生まれることでなかなか彼に人間味を感じて結構いいなと思った。そういうの無しの純粋悪もイイと思うけど、アラジンを使ったり憎んだりにも根拠が生まれるというか……。)


印象的だったシーンは、アラジンが極寒に飛ばされたシーン。
砂漠から極寒へ!という極端さ真逆さも心地よかったけど、
この時、アラジンとアブーが少しだけはぐれる。
その際に、アラジンがアブーをすごく必死に呼んでいて、
その時、アラジンにはアブーしか家族がいないのだ、という事にハッと気が付いて、そこから目が潤み始めた。孤独。大切な家族だ。


『Friend Like Me』、「最高の友達」、という概念。
丁度、舞城王太郎の短編『我が家のトトロ』を読んだ直後だったので、結構重なる部分を感じて面白かった。特に関係ないハズだけど関係性を感じる別の話を重ねて読み解いてみるのって、楽しいね。
『我が家のトトロ』で、トトロというのは「ありえないくらい凄い友達」や「希望を作り出す架空の存在」というふうに称されるんだけど、これってかなりまんま『アラジン』のジーニーとも重なるように感じる。
人は度を過ぎる息苦しさがあると通常の息抜き(普通の友達)では息が抜けなくなるから、もっとすごいものを求めるという概念で、トトロを求める人々はやっぱり皆そういう息苦しさを感じているのではないかという考察なんだけど、
アラジンも、盗みをしなければ生きられないような生活を送っていて息苦しい毎日だったと思う。ジーニーを求めるような息苦しさを感じていたんじゃないだろうかと感じる。
日常からの脱却に、非日常(=最高の友達)を求める。
まあ、アラジンの場合は本当にジーニーによって人生を一変させることになるので、トトロとは違うんだけど、
でも「最高の友達」ってなんだろうなと思うのだ。

私も、最高の友達を求めてやまないなと思う。
でも「最高の友達」が幸せを求める時、平凡になることを望むのだとすると、最高の友達を相手に求める事って、対等じゃないよなと思う。(そもそも最高の友達を求めること自体が他力本願だしね)
ジーニーとアラジンの関係性は、主従のような親子のような、その時々によって力関係がクルクル変わったりそのバランスがとても心地よい関係なのだけど、やっぱりランプの魔人とマスターな以上、対等ではない。
今作『アラジン』では、ラストでジーニーは人間となりいわゆる「最高の友達」ではなくなる。でも、それによってやっと彼らは対等になり、アラジンとジーニーは真の最高の友達になれたんだろうなと思う。
美しい物語だ。


☆5/5