あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『リップヴァンウィンクルの花嫁 【serial edition】』2016年全6話制作国日本

~あらすじ~

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』のドラマ版。


※以下ネタバレアリ


~感想~

結構映画版と違う!
無かったシーンがかなり追加されてる!
気づいたとこだけメモ…と思ったけどキリ無いので簡単に。

  • 相違点
    • 家庭教師相手の生徒の姿が出る(通話画面が出る)
    • 結婚式のキスシーンの構図が少し違った(映画版ではナナミの顔が正面からも映るけど、ドラマ版では横顔ののままで済んでる(なんだかさっくりとシンプルな印象))
    • 映画版はシーンによってはBGMが流れていたけど、同じシーンでもドラマ版では流れていなかったりした。
    • 増えてるシーン多数
      • ランバラルについて安室と語るシーンがある
      • 夫との日常シーンも増えてる
      • 親のシーンも増えてる
      • 他多数
    • 減ってるシーンもいくつかあった
      • 夫の出会いシーン
      • 安室と2人のシーンが多くカットされてた
        • 浮気調査依頼後の男女についての会話シーン
        • 夫と別れた後の電話シーン
      • 真白と2人のシーンも多くカットされてた
        • ナナミと真白がクラゲ部屋で語り合うシーン
        • ナナミと真白が花嫁姿で寝転びながら語り合うシーン
      • 真白が雇い安室が選んだナナミの本当の役割判明シーン
    • ラスト変更
      • 葬式シーン
        • 女優達の語り、各カットの繋げ方変更やBGM追加。(冒頭の旧友AV出演の件も相まって、全然違うシーンになってる)
        • 偽父喪主の挨拶シーン追加
      • 真白母との対面シーン全カット
      • 教職復帰連絡シーンや清掃復帰パート復帰中シーン追加
      • 安室見送り後のナナミ一人シーンはカット、別れで〆られてる。

正直映画はあまり好きじゃなかったけど、
パッと流し見したところ、結構相違点があったので観てみた。
そしたらもう、メチャクチャ映画版と比べて色々なシーンが増えてる!!!かなりカットされてたんだなあ。
結構シーンの有無で、映画ドラマ共通してあるシーンの意味合いも変わってくる~!を感じた。全体的な印象がなんか全然違う。
映画版も3時間と長尺だったけど、それでもこの話を充分に描くには足りなかったんだなと感じた。


映画版は冒頭は、夫との出会いシーンからだけど、
ドラマ版は、中学校シーンからだったり、
逆にドラマ版でカットされてるシーンも結構あった。
ラストシーンなんてもはや全然違う。凄いね。

鍋食べた旧友とか、映画版ではシーンも短く登場理由がよくわからなかったけど、
ドラマ版では、AV出演の過去も明かされて、彼女は本当にナナミとかけ離れたキャラで、彼女の登場にはナナミが性や男に不慣れなことを際立たせる意味合いがあったことを感じられたし。
(後に出てくる真白もAV女優だったので、始まりにも終わりにも出てくるんだな。重なるのでカットされたのかなー。
ナナミはかなり純粋な人物なので、真逆の存在として置かれてるんだろう。
でも、序盤のナナミは旧友の告白に対応できていなかった(無言)けど、後半のナナミは受け入れられるようになっていたように思うので、変化が表されてたんだなと思う。)
というか、葬式時の覚悟決めてる女優達のシーンの見え方が全然変わってくる。冒頭の旧友の意識の差と、凄い。うわ!いやいやこれ、冒頭旧友がAV女優なの意味あったな……。

映画版では、結構あれよあれよとナナミが偽親族を依頼した印象だったけど、ドラマ版では夫から、誰かに頼んだりとか…という言葉が出ていたことがわかるし。
結納シーンでも、ナナミ母の浮きっぷりが酷く夫親族側の悪印象がうかがえるし、ナナミ父からナナミ夫のマザコン指摘がハッキリされててマザコン強調もされてるし、その後の夫母が別れさせ屋を頼む心理や関係の伏線がしっかり張られてる。

初期の夫はまだ一応優しい所もあったのかなーとも少し感じた。ナナミがした生徒質問に、真面目に答えようともしてくれるし。一緒に草花に水あげたりとか。
ナナミに幸せか確認する追加シーンもあったし。
(これらのシーンは映画版ではなかったので、もっと冷たい人なんだと思っていた。)
仕事退職の相談は確かに、配偶者にはするべきだったと思うから、やっぱりナナミが夫に頼らな過ぎて信頼関係を築けなかった部分あるなと思った。
ただ、味噌汁やけどの追加シーンとか、やっぱ夫側も問題ある部分はあると思うので、お互い悪いけど。
映画版だけの時は、理解不足だったので、この夫婦がここまで信頼関係無いのはスピード婚のせい?と思っていたけど、
ナナミの相談不足や、偽物親族や両親の離婚を隠しが重なり、信頼しようのない状態で別れさせ屋による浮気でっち上げがあり、どうしようもない状態だったんだな。しかもマザコンだし、そりゃ母親側を信じるよな…という感じだ、納得がいった。
夫目線で考えてみると、酷い事されたと思ってるだろうに慰謝料請求もしないようだし、かなり優しい方だったんだなあと思った。

義母が頼んだ別れさせ屋が、安室のトコだったのは、結局偶然、なのかねー。(安室と別れさせ屋は完全にグル(後始末もしてたし、単なる同業者~では無いと思う))
結納、結婚準備、結婚(偽親族)、別れさせ屋……、という順序だから、
結納時点で義母が別れさせ屋を頼んでいて、調査目的か何かで安室がランバラルとしてナナミに近づいたところ丁度結婚準備でナナミが困っていたので、偽親族を提案、偽親族分の依頼料も入るし後々別れさせ屋やる時に偽親族の事も理由の一つにできるし、一石二鳥!という感じだったのかな。(まあ安室は仕事で別れさせるだけで、別れさせたいとは違うだろうから、偽親族の事は単に丁度クライアントが見つかってラッキーだったって感じかな。)
義母がナナミを嫌い過ぎてるの、映画版だけだと謎だったけど、ドラマ版だと本当にお母さんのいらんこと言いっぷりが酷過ぎたし、出会いがネット経由の不信感や、離婚や偽親族の件等嘘続きに嫌悪感がわいただろう事を考えるとわりと妥当な反応なんだな。別れさせ屋を雇ったりしてるので、どこまでが素の反応でどこが演技なのか前はよくわからなかったけど、ナナミの家族関係に関する反応は恐らく素の反応だったんだなと思った。最初は、ナナミの母に対する嫌悪感やネット経由の不信感だけだったかもしれないけど、段々増大したんだろうなと思う。
(偽親族の様子から不信感を持って別れさせ屋に依頼~というパターンもあるかもしれないけど、その場合別れさせ屋の依頼先が偽親族の依頼先と偶然重なったことになってしまうので、やっぱ依頼順は別れさせ屋が先かな?と思う。)
別れさせ依頼、ソレに対する浮気調査依頼、両方自分ところで請負えると本当一石二鳥な感じするな~安室一人勝ち。いや、浮気調査依頼分の仕事もしてたけど…。

「ランバラルの友達ですから」正直映画版の時は訳がわからなかった。
というか、はなからランバラルと安室って同一人物だと思っていたので、先入観からかずっと意味が上手くつながらなくて。
コレ、ナナミに対しては、一応ランバラルと安室は別人っていう設定だったのか。
私の理解力の問題かもしれないけど、ソコが全然わからなかった。追加シーンによって、安室の初登場時の立ち位置がかなり分かり易くなってる。
(別れさせ屋が安室をランバラルと呼ぶので、安室=ランバラル、が真実の様子。)
ナナミはランバラルを女性(かつ気持ちを理解してくれる人)だと思っていた、というシーンがドラマ版で追加されていたので、やっぱり安室とは別人と思わせている方が都合がよかったのかもね。

ナナミ父のシーンも追加されてて、結構ナナミ的には喜ぶ親のプレッシャーもあったのかな…とか感じるし。
ドラマ版結婚シーンは、偽物家族が名前忘れたり、神父がへんな片言日本語だったり、かなりギャグ要素強くてなんだこれだった。へんな結婚だわ。(そういえば映画版でも神父浮いてたけど一瞬だったから忘れてたなあ) 披露宴の茶番もかなり尺あってマジかだった。

安室に関するシーンが結構カットされていたのが意外だった。
カットされたようなああいう会話等を経てたのもあって、ナナミの安室への依存度が増してた様に思うので。この編集の違いも、結構印象を変えていると思う。
真白とのシーンもほぼカットされていて、二人のキス等が無しになっているので、
基本的に、ナナミが誰かに依存しているシーンが大幅カットされていたのかなと思う。
真白がガンだったために、ナナミは彼女の心中相手として呼ばれた事が明かされるシーンまでカットされてて、やっぱり結構色々意味合い変わるなーーと思った。(ガンだったことは葬式シーンで判明するが)
安室が、普通にナナミを死なせる気だったシーンが大幅カットされてるので、安室に対する印象も今作だけだと全然違うと思う。

しゃっくりとかくしゃみとか、急な事に対する対応とか、
映画版一度観てから、ドラマ版もまた観てみると、本当ナナミ抜けてるというかなんというか……、生き下手だなあと思った。

映画版でもそうだったけど、全6話のドラマ版でもちょうど真ん中の前半3話と後半3話で内容が分かれていて、前半は現実や依頼する側、後半は別世界や依頼される側。そんな風になっている。
逃げて逃げて辿り着いた場所。何かで、不思議のアリスかに称されてるのをみたけど、確かにそんな感じの話なのかもなと思う。
というか、リップヴァンウィンクルが不思議な世界に迷い込むという海外版浦島太郎みたいな話らしいので、そっちが近いのかな。
確かに色々な経験をする前と後とでは、ナナミにとって見えている世界は本当に様変わりしたんじゃないかな?と思う。

追加シーンの、結婚式で安室が暇だから喋るマネの一人芝居してるシーンなんかよかったな。面白かった。微妙にお茶目というかなんというか。舐めてるというか。彼らしいシーン。

そういえばあの白い帽子は、ナナミのアイコンか。角隠しイメージっぽいのは映画版感想でもメモってたけど……。

どくんどくん毒毒

ベタのシーン、
安室が青い方のベタの水を赤い方にそそぐシーンがあるけど、これは青=ナナミ、赤=真白なのかなと思う。水は生命力というか。
ラストでは、青のベタも充分そうな大きさの容器に入れられているので、ナナミが息を吸えるようになったことを表してるかなーと思う。

映画版は、まっさらエンドって感じだったけど、
ドラマ版は、この経験や日々によって残るものもあり、確かに先に進む道筋が見えているような終わり方だった。こっちの方がなんだかじとじとはカットされあっさりしてる分明るい終わり方かな。

ED中に、次回予告もやる構成はなんかいいなと思った。雰囲気出てるし。
作中の歌含め、Coccoの歌綺麗だなあ。
着信音がなんかかわいかった。

どうでもいいけど、追加の物件巡りシーン3軒目の物件が可愛かった。面白い家ってあるなあ……。
入ってすぐは突き当りで、左右に部屋が分かれてて。部屋内にはしごみたいに登れるスペースがあったり、天井は屋根裏の様に斜めってたり。半月型の窓があったり。
ラストの広い部屋は、『花とアリス殺人事件』でアリスが部屋で踊っていたシーンを思いだす、『花とアリス』にもそういうシーンあったかな?どちらの記憶かはちょっとうろ覚え。

そういえば、『四月物語』の2人と今作の2人。顔の系統というかパーツ配置や輪郭の雰囲気が、それぞれ似通っている様な気がしたので、やっぱり岩井俊二監督はこういう2人の組み合わせが好きなのかなーと思った。『花とアリス』といい。
そういえば、東京で色々変な事が起きるっていうのは『四月物語』とも通じるのかな~。


それにしても、結構会話の間がカットされていて、
こんなに会話カットしていても、全然通じるし違和感ないんだなって……驚いた。
話の大まかな筋道自体は変わらないのに、
増えているシーンや、減っているシーンで、受ける印象は全然変わるなという事も感じたし、見比べることができてよかった。面白かった。
ラストは本当に、これは違うねー。

追加の結果助長なシーンもあったかもしれないけど、
映画版より断然、各人物の心情の動きや行動理由、意味合いや流れもわかりやすくてよかった。
話自体は観るのが二度目だからっていうのもあったのかな?でも分かり易かったな~と思う。

映画版の時は、ナナミに対して、こいつ何なの??という感情ばかりが先走ってしまったけど、
ドラマ版では、なんだか本当に純粋な人なんだなと思ったし、生き難い弱い人なんだなと思った。そんな彼女が、色々な失敗や経験を通して成長する話だったのだなと。

安室や真白に対する依存度の高いシーンや、
結婚式のキスシーンもなんだかシンプルな印象を受ける構図に変わっていたり、
細かなところで、ナナミに対してジメジメとした印象を受けるようなシーンがドラマ版では消されていたのかな~と思う。
ナナミが泣いてるシーンってのがかなりカットされてた。
泣いてる姿が無いって、結構印象変わる。
その点でも色々印象が変わったかなと。多分その辺や、追加シーンでナナミや周りの情報が増えた結果、ナナミに対する印象が変化したのかなと思う。
(映画版で印象に残ったと私が書いてるシーンはほぼカットされていて、ウケた。でも、無い方が良いや。)
真白と共依存のような関係になっていく流れは、弱い感じ凄くするし、その辺がカットされてるのデカい。
各人の悪い面というか闇やじとじとを感じるシーンはカットされていたり、心理が分かり易くなるシーンは追加されていたり、各人物が結構受け入れやすい形になっていたのかな~と思う。
映画版だと、ナナミは安室に殺されかけてるのに何も知らずに感謝して終わっててモヤモヤが残るけど、ドラマ版では安室(真白)の目的シーンがカットされてるので一応綺麗に終った気がするし。(ドラマ版だけの内容で言えば、別れさせ屋関連はともかく後半の安室は本当にただナナミを助けたような形になると思うので感謝も一応自然。)(真白も当初は心中目的だった、って要素が切り取られてるし。)
一人きりの部屋のシーンで終わらず、別れで終わるし、パートも教職もあるので、映画版で感じた様な何も無いまっさらな状態でほっぽり出されたような印象は受けず、ドラマ版では確かに何かを得てこれから先に進めるようになったような印象を受けた。
映画版では、ナナミは本当に夫や義母だけでなく、安室や真白にも振り回されていて、それらを知らずに感謝してるし何も無くなった様に見えたけど、
ドラマ版では、安室や真白の振り回しがカットされてるうえ、残ったものもある様に見えるので、わりとスッキリとした気持ちで見終えられるなあ。
映画版は、自分が受けた仕打ち等を何も知らぬまま新しい部屋にぽつんとしてて、なんか、結構嫌な気持ちになった気がする。
真白母シーンが無くなってるのはいいのかな?だけど、真白と恋人の様に深く関わってたというシーンもカットされてるので、アッサリでも違和感ない感じになってる。
他者への依存シーンが大幅カットされた事によって、ナナミが結構頑張っていたような頑張れる人のような印象が残ったのかなーと思う。立てる人間的な。

映画版と比べ、BGMが数ヶ所無くなっていたのも良かったなと思う。
忘れてたけど、無しと比べるとちょっと大げさというかくどい印象があった気がするので、無い事によって、数少ないBGM有シーンが映える気がするし。EDも映える。ドラマ版の方が好きだなー。
特に、後半シーンでのBGM付きは楽しげ過ぎるような気がした。でも、BGMがある事で、より一層非現実感が増しているので、映画版ではそっちの演出に振られてたのかな~と思う。確かに、それはそれで非日常さが強調されていてよかったかも。夢の中のような。うーん、甲乙つけがたい!

映画版、ドラマ版、両方観て、
作品に対しての印象、変わりました。
すごいな、編集って。びっくり。


★4
2019/09/03 鑑賞
映画版から、約11か月ぶりでした。