あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『シング・ストリート 未来へのうた』2016年105分制作国アイルランド・アメリカ・イギリス

~あらすじ~

離婚寸前の両親、荒れた学校への転校、どん底の主人公コナーはある日恋をした。
彼は彼女の気を引く為、咄嗟に「僕のバンドのMVに出ないか」と誘ってしまい、慌ててバンドを組み始め……。


※以下ネタバレアリ


~感想~

ずっと気になっていた映画の一つ。
少年少女の青春映画、ハイスクールもの好きなので。


良かった!
少年特有の小さくて細くてキュートな感じと、溢れるエネルギー。最高!
音楽も良いし、良かったと思う。気に入った、切ない。
ドンドン集まっていってテンポ良いというか、若さの強さを感じた。いじめっ子も最後仲間にするしね、皆やりきれない中でから回ってるだけなんだろうな。
始めは全然イケてなかった主人公、それが物語が進むごとにどんどん洗練されていく。男子三日会わざれば刮目して見よ !
これも若さのエネルギーを感じた。15歳、イイね!!

各曲シーンがイイ!!!
二曲目の演出とか、段々楽器が重なって増えていくの熱かったな。カメラワークもあってて。(Up)
後半の、現実とは違う、夢のシーンも切なくてよかった。彼女はこないし両親は別居するし兄も……、真逆の世界。だから歌詞も切ない。「これは君の人生 何にでもなれる」(Drive It Like You Stole It)
こういう、現実と全然違う夢のシーンみたいなのに私は弱い。『ラ・ラ・ランド』にもあるが、あのシーン弱い。
海辺で飛び込むシーンなんかも、青春で良かったね。皆は手拍子するターンがあったり爽やかでいい。
校長のお面を観客含めみんなで被るラストギグもサイコー。段々支持されてく感じが心地よいしね。みんな踊れ!

各登場人物たちも、特徴的でキャラ立ちがしっかりしていて良かった。チビだけど口が回るマネージャーとかいいよね。
特に好きなのは、お兄ちゃんと、兎好き&楽器万能のエイモン。
お兄ちゃんの良さはもう、本当言わずもがな。何でもできたけど、何者にもなれなかったカッコイイ兄貴。
最後歌詞託されるけど、本当お兄ちゃんの心情色々考えると、結構切ないなあ。
あの兄のサポートが無ければ、主人公はここまで進めなかったと思うしかなり大事な存在。優秀な先駆者って、偉大だな……。旅立ちのハグシーン、熱かったというか、良い兄弟愛だった。
エイモンはやっぱり作曲担当なので、一緒にいる時間も長いし、段々ツーカーな感じになっていくところとかグッときたな。独特の空気を持ったキャラクター性も良い。家に妙に兎グッズがあふれてるのも面白い、ベッドでフンしないよう兎に言い聞かせたりw 様々が楽器を咄嗟に沢山演奏してくれたり。
ライブでも、エイモンはなんでもレッツゴーって感じで、主人公の提案にやろうって返してくれた。いいねえw

悲しみの喜び 愛
「何でもハンパはダメ」

帰ってきた彼女のブルーのふわふわ上着かわいい。

映像もシンプルながらにイイ感じだったなと思う。
タイトルコールまでの勢いとか良い。
少し、雰囲気が良く見る映画と違った気がする。アイルランド製の映画ってあまり観た事無いと思うので、そういう影響もあるのかな。
終わりのシーンとか、朝の空気がすごかった。
バンド名決まった直後の謎のスローとか笑 おもしろい。
終盤2人が外へ向かって駆けだした後ろで、吐いてる人が普通に居るのが、この街のどうしようもなさろくでもなさを地味に表してた。
序盤、彼女に出逢うシーンの直前、結構カットが入った?のがありありだった(主人公の目元が急に黒くなってたり)点は少し気になった。
あと、予告では激励しているように翻訳されていた兄貴の台詞、本編では兄貴が色々重なった結果心情を吐露してブチ切れてるシーンで、全然台詞が違った。言語がわからないのが悔やまれる。どっちがあってるの?どっちもあってるの?わからない。そこも気になった。
(本編では、兄貴は自分で自分のことを人生諦めてるなんて言ってないと思うし、なんなら俺達には夢があるぐらいの台詞もあるから違和感があった。「お前は夢を捨てた でも俺らは違う」)
予告の「俺みたいに人生から逃げる気か お前には未来があるだろ!」と、本編の「俺の気流に乗って」「だがかつては俺が ジェット気流だった」ではもう全然違う。まあ、音声を聞く限りやっぱり翻訳としては本編の方があっていて、予告は意訳というか誇張表現というかなのかな。でもまあ、予告のこの台詞で興味を持ったのも確かなので、宣伝としては正しいのかも。
(お兄ちゃんも前に進めるといいなあと、思う。切な過ぎる。家出は許されず、飼い殺しの親の愛、難しいなあ……。でも兄貴も家族を愛しているからこそ、家に居たんだと思う。悲しい。)

凄い終わり方。
物語の構成としては三幕構成だったのかな?
転校してバンド開始決意、キス(本当に映画のど真ん中)、別居&消える彼女(どん底)、ギグ、旅立ち。
どん底とギグはどっちだろ?ギグと旅立ちはどっちだろ?その辺はちょっと自信ないかも。でもあれかな、ギグと旅立ちはフィナーレで一つかな。
両親の喧嘩を聴きながら一人部屋でギター弾いていたスタートから、彼女と二人で荒波にもまれながらも新しい世界へ旅立つエンド。
だいぶ変わったよね主人公。
彼女の歌って事も序盤は誤魔化してたけど確か後半は認めてたかな。
いじめっ子や大人たちに翻弄され、折檻されたり怒鳴られたり殴られたり、色々結構踏んだり蹴ったりだったのに。でも前を向いていたね。
成長したし、とにかく前へ進むパワーって偉大だなって。「言葉だけで行動しないなら それはムダなこと」

主人公の悩みは、結構平凡で身近な内容。
不仲な両親。恋の悩み。イヤな学校。
そういう等身大さもよかった。
ただの冴えない少年が、一目惚れからバンドを始めて、どんどん変わっていく。多分よくある話だけど、でもだからこそというか、良かった。凄いパワーとひたむきさだよ、真っすぐな若さ。
監督の半自伝的な内容らしいから、そういう経緯からこの身近さみたいなものが生まれてるのかな。
何かに夢中になってる少年少女たちって、最強だわ。

流石に終り方はかなり突飛というか……、現実なの?って気もするほどの、かなり向こう見ずな行動で、上手く行くとは到底思えない内容なのだが、
でもそれぐらいの覚悟というか、象徴的なシーンなのかなと思う。
社会の荒波にもまれても、道しるべを見つけながら、前に進み続ける。
比喩にも近いシーンなのかな?と受け取ってる。ちょっとびっくりしたな。
(予告では、どうせ彼女には振られて、彼女が帰ってきたあとも疎遠になったりするのかと思ってたので、まさかの手に入れて結構吃驚。)
死ぬかもしれない先は見えない、けど、挑戦しようっていうメッセージかな。決心。「定めたゴールに突き進め それがすべてだ」


冒頭の主人公は歌も全然へたくそだし、マジで全然冴えてないんだけど、
仲間もいるし、恋もしてるから、どんどん曲作って経験を重ねて、どんどん成長していってまぶしい。
終盤のギグのライブシーンとかヤジ飛ばされてるけど、「ヤジなんて つまらないよ」と意にも返してないし、
その前にも以前自分を殴ったいじめっ子に対して「君は暴力だけだ 何も生まない(not create)」と毅然と発言する。
凄くカッコイイ。それに結局本当にその通りだなと思った。
笑う奴らより、夢追って笑われてる奴らの方がよっぽどカッコいいし良い。全然見てる次元が違う。
舞台の下からヤジを飛ばす側より、舞台の上でヤジを飛ばされる側になりたい。笑われるなんて全然いいことだよ、認識されてるんだから。観客席なんて暗くて何も見えない。

自分も頑張ろうって気持ちになれるいい映画だったな。
ハンパはダメだし、言葉だけで行動しないならムダなことだし、これは私の人生で何にでもなれる。
良い映画だった。