あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『インセプション』2010年148分制作国アメリカ・イギリス

~あらすじ~

他人の夢に侵入し、アイデアを盗み出す犯罪のスペシャリストドム・コム。
しかし彼はその才能故に国際指名されてしまう。

※以下ネタバレアリ


~感想~

ずっと観たかった有名作。
……面白かったッ!!!!!!!
でも、でも、終わり方~~~!!!!ニクいニクいニク過ぎる。
まあ、こう終わるしかない作品ではあるので、相応しいラストだとは思うのだけど。(夢か現実か、ハッキリされても別作品になってしまう気がする。)
しっかし、止まるか止まらないか絶妙なところで上手く切ってたなぁ。ひーーー!だね。モヤモヤ。
祈るしかない。
エンドロールに入る音楽も結構重苦しいので、不穏さが残ってて苦しかった。


入れ子構造面白いね。
どんどん混乱していく感じ、難解で面白かった。
(まあ、中盤はずっと夢の中で現実か?となることはないけど。序盤とラストでは夢か現実かわからなくなったりしたし、ラストの妻モルとの会話では、確かにこの世界が現実かどうかなんてわからないよねと感じた。)
現実と夢の境界がわからなくなる映像作品といえば今敏監督映画だが、また違ったアプローチで面白かった。
夢の中で夢を見るごと、回想が深まるごとに、体感時間がズレて増えていくという設定が面白かった。
深すぎる眠りの中死ねば虚無に落ちるという設定も、退路が断たれ、緊迫感が出てよかった。急に明かされるし。
白血球の様に異物を排除しようとしてくる深層意識達、という設定も良かった。訓練済み深層意識とてもつよい。(訓練の概念があるあたり、結構夢からの情報盗み自体は結構裏社会では存在している世界なのかな。)
冒頭の仲間集めの段階もワクワクしたけど、各階層ごとに仲間を置いていく展開はさながらRPGみたいで、熱かった。良いね……カッコイイ!!!(ハリーポッターと賢者の石とかね)
各階層のアイディアも良くて、無重力シーンとか面白かった。だまし絵とか。

各登場人物もかなり魅力的。台詞とかシャレてるね。
イームス結構好きだったな~、アーサーもいい。でも皆良かったな。
爆弾なげて親指立てたり、大体結構thank youって返したり、イームスの飄々感よかった。アーサーの真面目に仕事できる感じもカッコよい。
俺は家族に会えるが…と気にしたり、達成後の笑み等も良かったな。みんなすごい、良い奴だったわ。
何も知らずに頑張って、感動してそうなロバート・フィッシャーも良かった。なんか、一人だけピエロで可愛かったな。でも、一応彼が植え付けられるインセプションは、絶望的なアイディアではないのでマシかなと思う。お父さんとの関係がずっと暗いままなのは辛そうだから。とはいえ、虚構の解釈なんだけど……。(数字は何だったんだろう?思い出なのかな)
エレン・ペイジやっぱりいいね。サイコー。こういう役柄似合うなあ、ピカイチ。
(なんと、各登場人物の頭文字を並べるとDREAMSになるそう。細かい。)


恐らく三幕構成かな。
ど真ん中で潜入した夢が武装されていて計画が崩れたり、今の状態で死ねば虚無に落ちること、妻の死の真実が明かされたりした。衝撃的だったね。
依頼、計画破綻(妻の死の詳細)、自殺の原因、帰還。
冒頭シーンが終盤に繋がる構成も熱い。
海で一人漂着しているシーンと、実家の子供たちとのシーン。これはあまり対っぽくはないかな。ただまあ、一応ラストを現実と解釈するならば、夢と海、一人と家族と、対にはなっているのかも。

ちらちらと、妻の死に関係するモチーフが目に映る度に、想起しそうになる感じが、
リアルというか痛ましくて、ハラハラして、良かった。日常って色々なものと結びついている。
あと、揺れる線路?とか、まつわるモチーフが要所要所で挟まったりも効いてたなあと思う。伏線張り等が本当に丁寧だった。列車とか……。
見る事の出来ない子供たちの顔とか、象徴的な概念があるのも良かった。

2時間半にも及ぶ結構長い映画なんだけど、その分描き方も丁寧で、
長時間の視聴に耐えうる内容の密度や濃さで良かった。


映像にはスローモーションが結構各場面多用されていて、でもこれがまた重厚感というかリッチな演出になっていてよかった。
水ってスローモーション映えする。
そして、ラストの空港シーン、スローモーションによって、達成感というかをしみじみ感じ入ることができてすばらしかった。あのシーンの、無言で通じ合う仲間たち、目で通じる感じも超カッコイイ。

髪の乱れ方とか、光の当たり方とか、表情の映し方なんかも綺麗でキマっててカッコよかった。
アクションもめっちゃカッコイイ。
回転するホテルでの戦闘シーンなんて、かなり複雑で面白かったーー。


今認識している世界を夢だと思いこみ、死で目覚めようとし続けるモル。
彼女のその思想が、主人公のインセプションによるものだったと明かされるのもマジ良かった。
人の思考って、確かにどこでどう歪んでしまうのかわからない。怖い。解釈も人それぞれだから、何がどう転ぶかわからないし。洗脳にも近いかな。
イデアが彼女を変えた。
そのアイデアが自分が植え付けたもので、相手の思考が混ざってないとしたら、確かにずっと苦しいだろうなあ。忘れないだろうな。夢から覚めても、これは現実じゃないと思い込み続ける、きつすぎる。

現実から夢の世界へと去った彼女が、
夢の世界では存在していること、
はじめは単に、主人公の記憶の影なんだと思っていたけど、
ラストの方で、それは確かに事実ではあるが、
これは、彼女はまさに夢の存在になったという事なんだとも感じた。
彼女はずっとジャマしてくることが、カッコたる意思を持っているかのようで、良かった。
俺と一緒に居たいからロバートを撃ったというセリフで、彼女が今までジャマしてきていた理由もザックリ明かされて良かった。
また、2人が本当に愛し合っていたことが、各所で感じられて本当に悲しい。2人で話してる時の主人公の声なんてかなり甘くてびっくりするくらい。
夢の世界での50年、老夫婦になった二人が手を繋いで歩いていたシーンも凄く訴えてくるものがある。一緒に歳をとろう。
こんなに愛しているのだから、例え夢でも一緒に居たいはずなのに、
完璧なのに欠点もある複雑な現実のモルとは違う、結局夢のモルは影でしかないと一蹴するのもまた、愛を感じてよかった。

自分たちで作った、2人だけの世界。
なんて最高にロマンチックだけど、それが結果的に悲劇を生む切なさもあって良かったな。
夢日記をつけ続けると、気が狂う。なんて定説は有名だけど、夢が題材かつこんな話な以上、確かに夢で狂う人物は一人は必要な気がするし、それが主人公最愛の妻で、今ではもはや夢の住民なんて。いいねー。


現実と夢とで、同じ何かを確認して、夢か現実か確かめるのは、
確かに実際存在するテクニックなので、良いねと思った。親しみ深い。
でも、駒が倒れるか倒れないかなんて、夢でも倒れると思ってしまえば倒れてしまう気がするし、どうなんだろう。
実際、夢でも現実でも同じことを確認し過ぎて、夢でも現実とほぼ同じな為、区別がつかないという状態の経験があるので。
夢の自由さ等を考えると、それはどうなんだろう?みたいな部分も結構あったかな?と思うんだけど(殺すと白血球たちがちゃんと死ぬこと等)、まあ複雑すぎる話なので……、その辺は置いているのかなと思う。何個か揺ぎないルールが存在しないと、それこそ収拾がつかないというか。その辺はみんなちゃんと、殺せば死ぬという思い込みがしっかりできているのかなと思う、現実でも駒のことを回り続ける存在と思い込むように過ごしていて夢でも強く思い込めるから夢では必ず回り続けるみたいな。

麻酔師探しの際に、目覚めに行く為に眠る人々のシーンがあったけど、あれも結構印象的なシーンかもしれない。
結局現実なんて、感じ方次第というか、今の現実が現実かなんで実際誰にも証明できない事なんだから。
確かに結構、夢の世界が本物のように感じることってあるものな。同じ夢を長時間見たり、繰り返し見れば猶更。そう思うと、50年分も生活したら……、それは……。
結局人は、認識していることしか実感できないよね。

ラストで、主人公は駒(=夢か現実か)の確認よりも子供たちを見る事を優先させるけど、その事が重要だってコメントを監督はしているそう。
うーーむ。自分のやりたいこと、望みがとにかく大事……。ロバートも良い人生に進むかな。



イデアはウイルスの様に伝染する。
とても面白かった。
☆5/5