あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『RAW 少女のめざめ』2016年99分制作国フランス・ベルギー

~あらすじ~

医大学に入学したベジタリアンの主人公、
しかし彼女は、新歓の一環で生肉を強制的に食べさせられて……。


※以下ネタバレアリ


~感想~

来日当時気になっていた映画。たしか。

いやぁ久々に観たホラージャンル……怖いね!!!マジビビった。怖い。
自分はある程度グロ耐性はある方かと思ってたけど、コレはかなりしんどいものがあった。ストーリー仕立てのグロさって、ある程度感情移入しているせいか来るな。
あとここまでガッツリカニバリズム描写の入る話ははじめてだったかもしれない。凄い、ね……。

コレは結構感想の難しい映画だなぁ。
比喩的な表現というか、直接説明の無いシーンがあるため解釈に悩む。
あと正直グロ部分が衝撃的過ぎて、その衝撃で他の事やストーリーのことをあまり深く考えたりできない……。

新歓狂い過ぎ。
親切だったルームメイトがあまりにも不憫。
本能に振り回されてて、確かに父親の言う通り2人が悪いわけではというか、ある意味被害者なのかもしれないが、キツイな。でも指切断シーン等といい、主人公の性格も姉の性格も結構問題があると思う、キレ過ぎだし態度悪過ぎだよ。親が厳し過ぎた?のかな、でもそうなってしまう理由もわかるけど……。


印象的なのは「赤」。
各パーティや廊下やディスコ?のライトや、かけられる赤い液体(動物の血らしい)、そして血……。
基本的に日常シーンは、色温度の低い寒々とした色味なのに対し、不穏なシーンでは鮮烈に画面が赤く染まります。
最初の新歓パーティ?時の赤ライトと青ライト入り乱れる会場は、カメラの対象を切り替える動きと相まって、おかしな世界の中でシェイクされてるみたい。青ペンキと黄ペンキに映える赤の血とか、赤くないものは、より赤を強調する存在として使われていたのかなと思う。(目立って出てきた赤いもののなかに、平和な内容のものは無いと思う。赤はやはり意味合いが強かった気がする。)
最初のクレジットもエンドロールも赤。
それと映像で特徴的だったのは、遠方から撮ったカットだと思う。冒頭や終盤で入る。
あと、シーツ内のシーンも印象的だと思う。シーツを通した光の美しさも良かったし、シーツ越しに殴られて暴れ叫ぶ主人公の熱演もすごかった。

三幕構成だろうな。
マジで中間の衝撃展開はビビった。ここまでうわぁ…って気持ち悪くなるシーンそうそう無いので、凄い、ヤバかった。。…。
(入学)、新歓(初肉食)、初人肉(姉指)食、初体験、新入り卒業~フィナーレ。
かなりいろいろ突拍子もないものの、開幕の車(猟)シーンや、冒頭にベジタリアン(+過剰反応する母親)シーンがあったり、姉の部屋にもアレルギー薬があったり、一応伏線というかは貼られていたなと思った。中盤でのお父さんの、人肉の味を知った以上危険という発言も皮肉になってた。特に、冒頭あたりで、お父さんの鼻の下になんだか違和感があったのが、ラストで回収されてウワー!!!だった。
新入り期間を区切るパフパフが、本当に結構区切りを感じた気がしてよかったかな。あらゆる洗礼を受け、少女は大人になったって感じなんだろう。
ただ、三幕構成にしてはオープニングイメージとファイナルイメージの対さはあまり感じなかったかも。
こじつけるとするなら、猟から始まり…、真実で終わるというか。まあ何も知らなかった少女から、自分に目覚めその血筋を知り終わった。という感じかな。寒々しい空の下の引きの画から、温かみのある室内でバストアップと考えると、正反対かもしれない。
多分当初はまだぼんやり将来に進んでいたと思うんだけど、ラストではもう明確な問題に行き当たり終わるので、本当の物語はここからだって感じの終わりにも感じた。

BGMも、印象的な不穏で、とても合っていた。

血が出るシーンは勿論グロいけど、
髪もぐもぐして、その後吐くシーンもかなりえぐかったなと思う。

主人公の女優さん、なんだか満島ひかりさんに似てるなあと思った。結構人種を越えて似てる人っているよね。
熱演だった。

prime videoで観たのだけど、
字幕の出るタイミングが少し変?で分かり難かったな……。
ワンテンポ早かったり遅かったり。違言語を翻訳する以上厳しかったんだろうか。


一応主人公は結構ルームメイト好きったんだと思うし、
ルームメイトも恋愛対象かはともかく、結構優しかったので、嫌ってはなかった(友愛の好意くらいは持っていただろう)と思うけど……。
マジえぐかったなあ。
あとちょっとこの年頃の人々?怖いね。新歓メチャクチャ過ぎるし、立ちションとか、なんか色々悪ふざけが凄かったな。映画とはいえ、ハチャメチャだなあと思った。
指食については、お姉ちゃんブチ切れで引くかな?と思いきや、同類でoh……、冒頭の車シーンは姉かな。今思うと、泣いてたのは同類になってしまった妹への涙なのかな?
喧嘩も多い為姉妹仲は、良いのか悪いのか…という感じだったけど、再会時の2人はとても嬉しそうだったし、ラストも仲が良い空気だったので、結構繋がりの強い姉妹だったのだなと思う。姉に対して、主人公我儘過ぎ(服を借りる時や脱毛時)と思っていたが、姉も結構好き勝手だし、ああやって素を出せることこそ信頼の証だったのかも。ラスト姉を洗う主人公からは、大人になったなという感じがした。

やはり主人公の目線で物語をまとめてみると、やっぱりこれは多分成長の物語だった…のかな?若者主人公だし。
しかし、それにしては何かを乗り越えるみたいな事は無かったと思うので、
本来の自分を知る物語という方が、妥当かな。
マジメに厳しげな親の言い付けも守る優等生だった処女の子供から、
知らない場所に身を置き様々な洗礼を受け、本当の自分を目覚めさせ大人になった話。
目覚めた後、主人公がこれからどういう選択をするかは描かれていない。ただ、恐らく選択するだろう努力していくだろう方向性は、ラストで父親から示された。
でもなんか、モヤモヤが残っているのは、
これが問題解決の話ではなく、問題が起き、問題の原因が一部判明したところで話が終わっているからだと思う。問題は明確だけど、解決の方向にまで進んでない。
とはいえ、この物語はどうやらジャンルがホラーのようなので、ハッピーエンドになったりスッキリ終わるのも違う気がするので、このモヤモヤのまま…最低限度謎を明かした状態で終了でいいんだと思うけど、
多分問題が提起されるだけ提起されて、解決されていないのでモヤモヤするんだなぁと思った。
逆に言えば、問題が解決されないまま終わると、こんなにモヤモヤするものなんだね。
めっちゃ嫌味な教授なんかも放置だしね。大体あの新歓はマジでなんなんだよ。


うーん、なかなかグロすぎだしモヤモヤ残るしで、気分の悪くなる映画だったかな。
でも、こういう風に気分を動かせられるのって凄いなーと思った。
好きか嫌いかで言えば好きではないが……、こういう内容もあるかという感じの感覚が残った。映像はなかなか鮮烈というか、フランス映画らしさがあった。
揺らぐ不安定な少女の心情葛藤不安に苛立ち等が、印象的な映像で描かれていたと思う。少し比喩的と感じたのも、心理描写に繋がるシーンが多かったからかも。例えば新歓パーティシーンの不穏さや激しさなんかは、結構そのまま新環境への不安や期待に通じていたかなと感じる。
女性監督の長編デビュー作らしいので、今後どういう作品を撮っていくんだろう?と思ったら、どうやら女性シリアルキラーを題材とした構想を進めているとか。一貫している。