あるるる~と。

娯楽感想備忘録

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』2014年94分制作国アメリカ

~あらすじ~

40年連れ添った老夫婦、ブルックリンで彼らは眺めの良い最高の部屋に住んでいたが、5階のその部屋には問題があった。
それはエレベーターがないこと。そのため妻は、ある日この家を売ることを決意する――――。


※以下ネタバレアリ


~感想~

良いお話だった。
二人がお互いを愛しあい思いやってることが、端々のエピソードでとても伝わってきて、
すごいなすてきだなと思ったし、こんな夫婦になれたらとても素晴らしいことだよなあと思った。
本当に良い人生。

序盤の犬の件や、後半の子供の件、ちょっと涙ぐみそうになった。なんか、些細なことが結構くるなーと思った。

話の展開としては、結構変わってる方の話だな~と思った。
というのも、選択をした結果変わらない選択をとる話だから。(やっぱり大半のお話は、オープニングとエンディングで状況が変わるものだ。)
勿論本人たちの心持は変わったとは思うけど。てっきり売るのだろうと思ってたからびっくり。
でも、こんなにステキな家なのにな~とは思ってたから、売らないで安心はした、とはいえ、実際住むのは大変だろうなと思う。
だけど、大切な家に少しでも長く住んでいたいというのはそれは代えがたい気持ちかなと思う。やはり何が幸せかは自分たちが決めるのだし。


姪は本当散々尽力してアレはやっぱそりゃがっくりくるよなあ迷惑だよなあと思いつつ、ラストの悪態はスゴイなwと、もはや罵倒。親類なのに。でもあれぐらい気が強くなきゃ、あんな仕事やってられないんだろうなーと思う。
夫婦たちの本心である売りたくない側の気持ちに移入し易い構成だからか、どうも悪役っぽい位置になってたけど、彼女は普通に仕事してただけだしちょっと不憫な位置かな?と思った。実際仕事引っ掻き回されたりは可哀そう。だけど、結構彼女はデリカシーのない酷い言い方の発言も多かったので、まあ妥当な扱いなのかなー?うーん。

病気を患ってしまった犬、勃発したテロ事件、ギャラリーの話や、家を買い付けにくる人々、
特にテロは一見家の話に関係ない気がするのに、同時進行していくサブストーリーが結構あるのが独特だなーと思った。
でも犬の件に関しては、結構2人と重なる点もあり、それこそ犬の病気は未来の彼らの姿ともいえるのかも(そういう比喩かな)と思って、結構切なかった。
夫の絵はもう今では売れないというギャラリーの話も、本当に老夫婦の居場所が消えていく比喩というか事実で、切ない。(でもここの、夫本人ではなく妻の方が怒り戦っていたのが、すごく愛を感じて良いなと思った。)
家を買い付けで出会った人々は本当に独特で、笑える。でも本当に、特に良かったのはあの女の子だな~眼鏡姿で歯並び含めとてもかわいい。彼女のお母さんである、ベッドで寝る母親もおもしろいwなんだこいつだったけど、他の人々よりよっぽど好感のもてる人物だった。(それにしても、あんなふうに他人がわんさか自分の家を値踏みしにくるなんて超しんどそう。)
そしてテロ事件……。この話は本当にあまり関係ない気がして、不思議だった。でもあのテロ事件があったからこそ、結構買い付けの話がそこまでトントンと進まなかった背景があり、色々考えるきっかけになったのだから、重要だったのだろう。自分たちはあのテロ事件と同様に、空騒ぎしているだけだ、というのを気づけたのだから。

テロ事件の若者に対する、若夫婦らの感想のシビアさと、老夫婦の感想のあたたかさ(ただの若者だという意見)からもうかがえるように、
結構全体的に、若者たちは冷たい印象を受ける存在に描かれていたなーと思う。
他人に厳しく冷たいし、老人は排除しようとしているような、そんな感じの印象を受けた。


エンドロールのニューヨークの街並みがとても美しい。曲も相乗効果だった。

家を売ろうとしていたところから始まり、家を売らないことに決めて終わる。
愛犬の急病、〈家を買おう〉、落札、引っ越さない決定、エピローグ。
一つ一つの出来事が、そこまで劇的ではないのでちょっとわかりづらいけど……、一応やはり三幕構成なのかな?

メインストーリーの売買の流れに、
サブストーリーであるテロ事件や急病の愛犬、
合間に挟まる過去の二人の回想等、
結構色々な流れが同時進行していて描かれており、静かながらも独特の構成がされた映画だなあと感じた。
結構脇役たちが多く出る為、色々な人生も感じた。

全体的にセピアがかっているというか、温かみのある映像で、二人の生きる世界観が感じられた。
ブルックリンって結構よく映画に出てくる街だけど、美しいね。
あと2人の部屋は本当に最高ね、特に良かったのは屋上菜園。ヤバい。アトリエもよかった、LP……。


時代的に、本当に偏見が強かった頃の結婚なのだろうし、愛を強く感じて、すごいなあと思った。
妻の、お母さんとの喧嘩回想シーンなんて、お母さんはただ心配なのだろうし、でも娘としてはやはり辛いだろうし、なかなか胸の痛むシーン。家族より彼をとるという決意をもつ程の愛、やっぱ凄い。
そして、子供の件も本当にせつない。でも、それに対する夫の対応が本当に素晴らしいというか、愛を感じて、すごいなーと思った。大きい赤ん坊。抱きしめ合っている二人の表情は印象的だ。
本当、愛愛愛な映画だったな。40年連れ添って、今もなお愛し合ってるってやっぱそれってとても凄いことだなぁ。

周りに流されず、自分たちの手で舵をとり、
本当の幸せを見つめ直すことの大切さを感じる映画だった。
充足した、満足できる生活を送ることって大切だと思う。
未来は心配だけど、未来のために今ある幸せを手放す必要なんてないのかもしれないね、というか。
自分が本当に望むものに気付き、それを大切にすることって大事なんだなっていう、そんな感じの映画だったかなーと思いました。
不安等に惑わされて、自分が本来望んでいない決断をしてはいけないよね。

ただ、本当にあの家にずっと住むのは大変だよな……と思うけど、
それでも、引っ越しは今ではない、そういう結論にしっかりと今至ったのならば、悔いは無いだろうし、
住める今を幸せに生きられるだろうし、やっぱり自分でしっかり満足して納得できる決断を行って生きるってことが大切なんだなーと感じました。